いよいよ明日は2022年の大みそか。今年はナルコスシリーズがフィナーレを迎えるもそれを撃墜する、「ジ・オファー」に完全にハマった。また、昨年に続き2022年の私的年間映画ベストテンをまとめたい【永久保存版】。
目次
- 【2022年】「ナルコス」 なきあとを支えた「ジ・オファー」
- 【2022年】映画祭最高賞を同時多発的に受賞したシンクロニシティ
- 【2022年】パンデミック以降、本格的に復活した映画作品たち
- 【2022年】年間映画ベスト10
- まとめ
【2022年】「ナルコス」 なきあとを支えた「ジ・オファー」
2021年にナルコスシリーズが完結し、海外ドラマから遠ざかっていたが、満を持して製作された超傑作「ジ・オファー」に夢中になった。
個人的にオールタイムベストの「ゴッドファーザー」というテーマもそうだったが、プロデューサー視点から描くというフレッシュさが最高だった。
「ゴッドファーザー」50周年に相応しい至高の極みだった。
【2022年】映画祭最高賞を同時多発的に受賞したシンクロニシティ
今年世界の映画祭では、性をモチーフにした同様のテーマが、最高賞を受賞するといった傾向がみられ、どれもが傑作だった。
「TITANE/チタン」がカンヌでパルムドール、「あのこと」がヴェネツィア金獅子賞、「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ」がベルリン映画祭金熊賞。
個人的には、2022年最大の特徴となった。
【2022年】パンデミック以降、本格的に復活した映画作品たち
※画像の引用元:Filmarks公式サイトより(以下同様)
2020・2021年は公開延期、劇場公開スルーが相次いだが、そういった動きも落ち着き、安定して作品が劇場でかかるという、これまで想定していなかった日常が戻ってきた。
自然と劇場にも人が戻り、映画祭も開催され、映画ファンとしては、これ以上の幸せはない。
溜まっていたエネルギーを爆発させるように、作品の質も高まりを感じ、劇場鑑賞にこれまで以上の至福を感じられた。
【2022年】年間映画ベスト10
A.TITANE/チタン
はじめてこの映画のビジュアルをみた時からこれはヤバいやつがキタと思っていて、予告をみてもどんな映画なのかさっぱりわからず。
鑑賞中は終始ぶっ飛んでいて、想像できない展開にワクワクドキドキがとまらなかった!
こんなにも楽しい映画体験は久しぶり!とんでもなくチグハグで成立していないはずなのに、バランス感覚が鋭くて、ビンビンくる映画。
カンヌパルムドール、えげつなない。 兎に角、情報を入れずに今すぐみるべし!
⚠️追記:以下ややネタバレ注意⚠️
本作は、情報を入れないでみた方がいいので、未見の際はスルー推奨。
多幸感、浮遊感、高揚感、痛々しさ、爆笑などが渾然一体となり、成立しないものを成り立たせる手腕は、前作では血統を描いたが、本作では誕生をなぞることで、ジュリア・ディクルノー監督はこの映画で進化というより、神となった。
さらに昨今、取りざたされてるジェンダー問題を嘲笑うかのようにして、飛び超えた果てを捉える発想。
また、女性ならではの視点でありそうでなかった人体の変容、変貌の捉え方がユニークで、攻めた描写でみるものの心を離さない。
主演のヴァンサン・ランドンは、性別や生物すら脱却し、地球外生命体のような存在を表現。
全てを曝け出し、唯一無二のキャラクター造を体現。
そして、終始飽きさせない前作超えのどぎつい色彩設計、画とアンビバレントな音楽の使い方により、作品として大胆ベースアップかつアクセント効果を醸し出している。
このように、最先端の流線形でド変態のアートなエンタメ映画だ。
グレイト、グレイト、グレイト!
B.ジ・オフォー
「ジ・オファー」については、こちらをチェック↓
3. アネット
レオス・カラックス最新作は予想を遥かに上回った、まさかこんなに素晴らしい映画だったなんて。
「TITAN/チタン」と違うけど、ある種同じ匂いもしたりして、甲乙つけがたい今年ベスト級が2本も連続するなんて、カンヌ恐るべし。
豊かでエレガントなダークファンタジーロックオペラ。レオス・カラックスの新境地にして、レオス・カラックスにしか絶対に作り出せない映画。
先が読めない展開に終始ハラハラ、えげつない才能による衝撃たるや・・・完璧な映画やないか(当社比)。
「TITAN/チタン」に続き、しばらくは内容に触れず、感想のみ。
⚠️追記:以下ややネタバレ注意⚠️
初期作品と違いデジタルに移行したカロリーヌ・シャンプティエの画に、スパークスの音楽が融合し、表現できる内容が大幅にスケールアップ。
リアルに拘っていた初期作品とは違った意味で恩恵があり、オペラの要素も加わりオリジナリティー抜群。
特に、ジャケットにもなっている嵐の船のシーンは圧巻だ。
アダム・ドライバーも今まででいちばんよかったのでは。
なぜ本作では評価されていないのか不思議。
何度もみたくなるし、映画でないと味わえない境地だし、そんなレオス・カラックスマジックがかかりまくっている大傑作。
4. トップガン マーヴェリック
映画同様に開始マッハ10で映画に引き込まれてしまい、内容同様にG10の重圧を感じられる没入度の高さなどが相まって、稀にみる欠点も隙もない万人向けの超豪速球ストレートを叩きこまれての三球三振、完全試合の面白過ぎる映画で、今年これをみないとマジで人生損する1本。
まさかここまで凄いとは!!
期待値のはるか上を超えてきた。
キング・オブ・王道、 はっきり言って、今回も「スター・ウォーズ」を下敷きにしたドッグファイトが主軸に置かれているが、リアルな人間ドラマが生み出すグルーヴは圧巻で、戦闘機シーンはのきなみ段違いに向上。
また、「クリード チャンプを継ぐ男」路線の続編でありながらも、トム・クルーズの生涯現役魂にはこれを凌駕する圧倒的な主役感はまだまだ衰えず、今回の魅力溢れる登場人物たちを持ってしても他のキャラクターに代役は不可能!
さらに、続編でありながら、「マッドマックス」で言えば、4作品目に位置するほどの完成度の高さで、2作目にして飛級昇格。
トム・クルーズが映画人生をかけた完成度の高さは、何階級も階級を一気にあげてウルトラヘビー級の超絶進化を遂げたステージでも、チャンピオンベルトを強奪してしまうほどの強度を誇る。
兎に角、他の続編成功組と比べてもトックプクラスに君臨する。
長年温めていた待望の企画は、想像を遥かに超えた至高の逸品だった。
トム・クルーズ史上最高傑作、ドント・シンク・フィールの最先端をいく生き様、この映画の解説など不要。
ザ・フーの「無法の世界」が流れるのも熱くなる、ポイント高し。
5.リコリス・ピザ
らしくないさわやかなPTA作品の中に、ときおり強烈な下ネタが混ざる青春時代の切り取り方にらしさを感じる。
主人公の2人には、注目の3姉妹バンドハイムのアラナ、PTA監督作品の常連の故フィリップ・シーモア・ホフマンの実子クーパーホフマン。
特徴的なのは、「初体験/リッジモント・ハイ」を下敷きにしたと思われる、とっ散らかったストーリーにのせた、豪華なキャスティングを配する贅沢な仕様。
また、毎度おなじみのジョニー・グリーンウッドのスコア、時代を象徴するサントラセンスは大変素晴らしい。
「アメリカン・グラフィティ」直系、超一流の映画作家によるノスタルジックを内包した映像表現の最新進化版。
6. NOPE/ノープ
ホラー界のノーラン、スピルバーグを目指しているのかと思わせられ、いきなり大物化した感のある、ジョーダン・ピールの最新作にして最高傑作。
正直、前作まではあんまり好きなタイプの映画作家ではなかったが、ここにきて突如化けたな〜という印象で、めちゃくちゃ面白い。
前評判が高かったので、あまり情報を入れずに鑑賞して失敗した、これはIMAXでみるべきだった。
内容は「何もいえね〜」的な作品なので、みたあとにいろいろと掘ったり、何度も鑑賞したり、楽しみ方は千差万別。
稀にみる考察のしがいのある骨太な作品。 絶対みるべし!
7.ナイトメア・アリー
2021年度アカデミー賞作品賞は、ノミネートされているもライバルも強く、2度目の映画化でもあるので難しかった。
しかしながら、ギレルモ・デル・トロ監督らしい独特なノワールの世界観、暗黒のカーニバルの造形は、美術・衣装デザイン・撮影賞といった技術部門のノミネート作品の中では有力候補だった。
「悪夢小路」といったタイトルが素晴らしく、主人公の地獄巡りライドショー的感覚が楽しい。
1946年に発表された原作「ナイトメア・アリー/悪夢小路」のリメイクというより、「悪魔の往く町」(1947年) 依頼の2度目の映画化。
デルトロ曰く、原作に忠実というより、原作の精神に忠実。
キャストは大変豪華。ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、ロン・パールマン、リチャード・ジェンキンスら錚々たるメンバーが名を連ねる。
特に、個人的に大好きな「キャロル」組であるケイト・ブランシェットとルーニー・マーラは大好きで、今回も大変素晴らしい。
8. パラレル・マザーズ
ペドロ・アルモドバルの作品は全てみたわけではないが、ペドロ・アルモドバル×ペネロペ・クルスの最高傑作。
アナ役のミレナ・スミットも今後大化けを感じさせる逸材だ。
ペドロ・アルモドバル監督の最新作、ペネロペ・クルスと5回目の共作で、ヴェネツィア女優賞。
監督の作品らしいビビットなファッション&インテリアが画面いっぱいに映り、情熱の国スペインらしいビジュアルに相変わらず魅せられる。
さりげない時系列シャッフルを巧みに織り交ぜるのもお手のもの。
性描写もエモーショナルに描き、母と娘の絆も共通するテーマだ。
ジャニス・ジョプリンの「サマータイム」が流れるシーンは身悶える美しさ。
さらに、これまでの作品と比べ、ラストにぶち込んできて映画がもう一段階高いステージに到達する感じと、歴史的背景が織り交ざって、巨匠の作品は現在もなお進化中だ。
9. あのこと
ヴェネツィア金獅子賞の衝撃作、想像を余裕で超えてきた。
ホラーよりホラー、ドキュメンタリーよりドキュメンタリー、リアルよりリアル。
1960年代のフランスは中絶が違法、時代の切り取り方の淡い色味、説明を極端に省略した登場人物の描き方、妊娠が進んでいくカウントのクレジットされ方などツボだった。
そんな禁忌を扱った題材にして、余計なものを削ぎ落としつつ、淡々とした造りにより、ポンジュノ率いる審査員を満場一致に受賞。
その評価は伊達ではなく本物。
奇しくも、この年のヨーロッパ映画祭最高賞の受賞作品は、同じような題材が賞を掻っ攫っている。
その中でも、閲覧注意レベルであり、問題作の一面も孕んではいるが、絶対にみといた方がいい大傑作だ。
特筆すべきは、その没入度の高さ。
みるのではなく、体感するというコピーにある通り、特別な音と画にある。
エフゲニー・ガルペリンとサーシャ・ガルペリンの兄弟によるミニマルな音楽。
撮影はバストアップが多く、主人公主観のカメラ目線で描かれている。
まぢで必見の話題作。
10.アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ
ベルリン映画祭金熊賞。
これは自己検閲版じゃなかったらもっと最高だったのに!!と思いつつも、みえないからよかったのかとも思いつつも、アンビバレンスな思いはあるが、想像していたよりかなりよかった。
映像はふしだらだが、中身は超真面目(といってもブラックコメディーだけど笑)という、ラドゥ・ジュデのルーマニア愛が炸裂している作品であった。
コロナ禍まんまという設定で、マスク姿が映画の内容に重層的にうまく機能している稀有な例で、この巧みさによりさらに好印象をもたらしている。
兎に角、攻めた内容でみる人を選ぶのは間違いないが、無修正版を公開して欲しい。
今年のベストオープニング賞に確定。
特別枠
※クライ・マッチョ
イーストウッドの 新たなるマスターピース。 少年と2人でテキサスを目指すロードムービー。 御年91歳、若々し過ぎるイーストウッド。老いてなお、凛々しく浮世離れしたその姿は聖人のように神々しい。 精神的にも、悟りの境地に入った名言の数々が胸に突き刺さる。 メキシカンな土地に根ざした音楽、撮影が見事だ。 特に、冒頭に流れるテーマソングと、ラストの結実については、イーストウッド映画的な進化がみられた。 いい映画には、いい踊りがあるというのが自負で、今回もそれがみられて嬉しかった。 クライ・マッチョの意味は、最後にわかる。真理の映画だ。
※コーダ あいのうた
今年のアカデミーは完全に「ベルファスト」優勢かと思い、蓋をあけてみれば作品賞を受賞。 授賞式では、リメイクなのに?と思ったが、監督のシアン・ヘダーも前作「タルーラ」から飛躍的に進化し、作品賞文句なしの大傑作。もっと真面目な映画だと勝手に思っていたが、そんな杞憂を吹き飛ばす、赤ずきんを被った狼のようで、油断をしてたら、ガツンとやられた。温かくあり、ピリッとしたコメディーに仕上がっていて、家族間でもNGなしの Fワード等連発する、高速手話が映画のテンポを形成していく。 聾唖もの、港町の漁港問題、合唱クラブ、青春映画といった好きなものだらけの要素が絶妙に絡み合うハーモニー効果の心地よさといったら、この上ない。 兎に角、主要キャラクターが際立って全員いい。よくぞこんなパーフェクトキャスティングが出来たなと思うほど、寸分の隙のなさだ。
※TOMMASO/トマソ
アベル・フェラーラ監督最新作。 アベル・フェラーラと言えば、ニューヨークのイメージが強かったが、実際は20年以上ローマに暮らしているとのこと。 そして、自身の生活をウィレム・デフォーに重ね合わせて描く。また、その妻と娘を演じているのは、実際のフェラーラ夫人のクリスティナ・チリアックと娘のアンナ・フェラーラ。 兎に角、終始アベル・フェラーラっぽい良作であった。 配信サイトのJAIHOにて日本独占初配信。
※オフィサー・アンド・スパイ
19世紀フランスで実際に起きた冤罪事件であるドレフュス事件を映画化した歴史ドラマ。2019年ヴェネツィア映画祭で銀獅子賞を受賞したロマン・ポランスキー監督作、原作はロバート・ハリスの同名小説。格調高い映画で、雰囲気が秀逸。撮影は「戦場のピアニスト」などパヴェル・エデルマン。画面の美しさが際立っていて、19世紀末のパリの再現が素晴らしい。当時の空気感、建物、風景、衣装などどこを切り取っても絵になる。内容も重厚で、文書改竄、証拠捏造などにより、真実が隠蔽され、国家を揺るがす一大事件が壮大なスケールで描がれる。善と悪の境界線が揺らぎ、昔からある政治的な問題を暴く。組織の対面・自己保身のために、真実を隠ぺいしてしまう人間の性は、150年以上前の事件なのに社会や人間は変わっていないことに気づかされる。史実なので歴史的背景がわかっていれば、より楽しめる。
※激怒
高橋ヨシキ長編監督デビュー作。地方都市を舞台にしたディストピア、ドス黒い怒りを体現したバイオレンス、社会のはみ出しものたちによる溜飲が下がる系譜の最前線、日本を代表する新たなカルト映画が爆誕。 高橋ヨシキの過去作である、東京残酷警察の特典である「企業CMナラヤマ」、「政府広報CM 外国人登録制度」、またヘルドライバーの特典「脱出!〜Bailout〜」からの大幅のアップデート。 「冷たい熱帯魚」路線は、また別の作品で実現して欲しい。 高橋ヨシキのエッセンスが詰まりまくった映画のオマージュ、体制側へのアンサー、タトゥー、フリークなどを音楽、画、特殊メイク・造形などを駆使し映像化。 オープニングから異世界へと旅立たせてくれるアートグラフィックと重低音から持っていかれる、気合いが入りまくっている。 特別な1本となった。
※フラッグデイ 父を想う日
これまで監督作品で社会の落伍者を扱ってきたショーン・ペンがついにその汚れ役を自ら演じ、実の娘と初共演した。 その汚れキャラは、「インディアン・ランナー」でヴィゴ・モーテンセンが演じたフランクがそのまま歳を取った感じの痛々しいキャラクターで、まさにショーン・ペンが監督・主演として、自ら演じるのに相応しいものだった。 そして、これまでも身内的なキャストが多かったが、ついに実娘ディラン・ペンを起用し、その瑞々しい処女作品となる演技がスクリーンいっぱいに投影され、ファンとしては非常に価値のあるものがみれた。 まさに次世代へとバトンが渡されて、新たなヒロインが誕生し、ショーン・ペン監督作品として、ネクストステージへ突入した気がする分岐点となった作品のように感じた。 それにしても、若いディラン・ペンの七変化が美しく、家族の絆、葛藤、愛情といった熱演はまさにリアリティーそのものだった。 共演にジョシュ・ブローリンも「インディアン・ランナー」で、デヴィッド・モースが演じたジョーに近いキャラクターで、こちらも素晴らしいキャスティングだった。 これからもどんどん親子共演作を量産して欲しい、素直にそう思える愛のある映画であった。
※ZAPPA
「ZAPPA」はこちらをチェック↓
※ボバフェット/The Book of Boba Fett
まとめ
・【2022年】「ナルコス」 なきあとを支えた「ジ・オファー」
・【2022年】映画祭最高賞を同時多発的に受賞したシンクロニシティ
・【2022年】パンデミック以降、本格的に復活した映画作品たち
・【2022年】年間映画ベスト10
今年はいよいよ劇場公開に作品が戻ってきた印象があって、映画が諸々と面白かった!
配信作品にしても同様で、骨太な良作が目立ち、劇場とは別口ながら、両輪で回していく姿勢を評価したい。
映画祭・アカデミーも攻めた作品が並び、ランキングにも積極的に取り入れるほどよかった。
それでは、よいお年を!!
個人的【2022年】年間映画ベストテン
A.TITANE/チタン
B.ジ・オフォー
3.アネット
4.トップガン マーヴェリック
5.リコリス・ピザ
6. NOPE/ノープ
7.ナイトメア・アリー
8. パラレル・マザーズ
9. あのこと
10.アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ
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