世界三大映画祭ベルリン映画祭入門編特集
毎年2月はドイツの首都ベルリンで映画祭が開催される記念すべき時期。2023年は現地時間2月16日から2月26日までが映画祭の期間となっている。映画ファンならば注目したいものの、残念ながらリアルタイムでベルリン映画の受賞映画が日本の劇場でみることは難しい。そこで今回は過去作を振り返るベルリン映画祭受賞作関連のおすすめヨーロッパ映画10作品他全50作品【永久保存版】。
目次
- 【ベルリン映画祭映画】ってそもそも何?他の映画祭の違いとは?
- 【ベルリン映画祭映画】ドイツの映画祭なので、ドイツ人監督に注目したい
- 【ベルリン映画祭映画】最低限みるべき作品の選出基準について
- 【ベルリン映画祭映画】最低限みるべきヨーロッパ映画10作品
- 【ベルリン映画祭映画】最低限みるべきヨーロッパ映画10作品以外の映画たち
- まとめ
【ベルリン映画祭映画】ってそもそも何?他の映画祭の違いとは?
※画像の引用元:IMDb公式サイトより
ベルリン国際映画祭は、毎年2月にドイツの首都ベルリンで開催される。
カンヌ国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭と並び世界三大映画祭のひとつ。
1951年から行われている歴史を持ち、愛称はベルリナーレとして親しまれている。
賞の名前にもなっているクマについては、ベルリン市の象徴であることにちなんだもので、トロフィーも後脚で立つクマの形をしている。
ベルリン映画祭は、他の映画祭と比べて「社会派の作品が集まる」「新人監督にも機会を与えている」傾向が特徴。ヴィム・ヴェンダースなどのドイツを代表する映画作家を発掘した実績がある。
【ベルリン映画祭映画】ドイツの映画祭なので、ドイツ人監督に注目したい
戦後ドイツの現実を描く、ニュー・ジャーマン・シネマの先駆けとして、フォルカー・シュレンドルフの「テルレスの青春」(1966年)、 「カタリーナ・ブルームの失われた名誉 」(1975年) 、「ブリキの太鼓」 (1979年)などの代表作がある。
そして、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ヴェルナー・ヘルツォーク、ヴィム・ヴェンダースといった映画作家たちが続く。
「不安と魂」(1974年) 、「ベロニカ・フォスのあこがれ」(1982年) 、「カスパー・ハウザーの謎」(1975年) 、「フィツカラルド」(1982年) 、「パリ、テキサス」(1984年) 、「ベルリン・天使の詩」(1987年) などの個性的で癖の強い作品を発表して、世界にその名を轟かせた。
【ベルリン映画祭映画】最低限みるべき作品の選出基準について
世界三大映画祭のすべてで最高賞を受賞している映画作家は世界でたったの3人しかおらず、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー、ミケランジェロ・アントニオーニ、ロバート・アルトマンがその栄誉ある賞を受賞している。
また、最高賞ではないものの、三大映画祭での受賞歴を誇る監督作、またその所縁のある作品からヨーロッパ映画を今回は独自に選出した。
ドイツの映画祭なので、なるべくドイツ作品を取り入れているため、アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの「恐怖の報酬」(1953年)はカンヌ映画祭の受賞もあるので、今回は外している。
また、ヴェルナー・ヘルツォークの「生の証明」(1968年)などの鑑賞しづらい作品は10作品から除外した。
【ベルリン映画祭映画】最低限みるべきヨーロッパ映画10作品
・野いちご(1958年)
主演は本作が遺作となった、スウェーデン映画の父ビクトル・シェストレム。
名誉博士号授賞式典の会場へ車で向かう1日を描くロードムービー。
現実と回想シーンの描き分け、針のない時計が象徴である、生きながらの死と死んでるのに生きている、といったテーマの融合が見事だ。
ベルリン映画祭金熊賞。
・いとこ同志(1959年)
ヌーヴェルヴァーグ代表のクロード・シャブロル監督作品、音楽はポール・ミスラキ、撮影はアンリ・ドカエ。
パリに受験のためにやってきた真面目で純粋な青年シャルル(ジェラール・ブラン)は、熱心に勉強に勤しむ。
彼はいとこのポール(ジャン=クロード・ブリアリ)のアパートに同居することになる。
シャルルとは対照的に、優雅な生活で享楽的な生き方を送っている中、シャルルは運命的な女性フロランス(ジュリエット・メニエル)と出会う。
いとこを通して、世の中の不公平を暴く。
こういった不変の真理を描き、モーツァルト、ワーグナーといったクラシックな音楽を使う映画が大好物である。
モノクロ映像のパリについても、当時のフランスの空気感が感じられる映像も大変素晴らしい。
ベルリン映画祭金熊賞。
・勝手にしやがれ(1960年)
ヌーヴェルヴァーグの記念碑的作品。
アメリカン・ニューシネマを牽引した革命映画で、今では極々一般的になっている手法・撮り方が満載でヌーヴェルヴァーグの個性が詰まっている。
従来の照明・美術などに拘りまくったスタジオ撮影・映画文法・映画という既成概念などからの開放感に溢れている自由な作風。
ロケ撮影、即興演出、同時録音、ハンディカメラの多用、低予算映画、第4の壁を破る、アンチクライマックス、ジャンプカットなど。
監督・脚本:ジャン・リュック・ゴダール。
出演:ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ、ダニエル・ブーランジェ、ジャン・ピエール・メルヴィル他(ゴダール本人もカメオ出演)。
ベルリン映画祭銀熊賞(監督賞)。
ジャン=リュック・ゴダール監督作品
アルファヴィル(1965年)
女は女である(1961年)
男性・女性(1966年)
・夜(1961年)
終始虚無感・不穏感・憂鬱さを漂わせ、シンプルこの上ないタイトルにのせた、ミケランジェロ・アントニオーニ得意の不穏の神秘性を醸し出す。
そんなふうに映画の登場人物たちの時の流れを切り取り、誰もが人生で経験するはずの倦怠期を描く、アントニオーニの「愛の不毛」三部作のひとつ。
撮影:ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ。
音楽:ジョルジョ・ガスリーニ。
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、ジャンヌ・モロー、モニカ・ヴィッティ他。
ベルリン映画祭金熊賞。
・たぶん悪魔が(1977年)
裕福な家庭で育った青年シャルル、環境破壊を危惧する生態学者の友人ミシェル、そして2人の女性アルベルト、エドヴィージュと美男美女が目立つ。
ロベール・ブレッソンによるミニマムな映画作り、シネマトグラフ。
出演者は素人、音楽はほとんど使用せず、感情表現をも抑えた作風で、必要最小限の描写で、「創造とは付加よりもむしろ削除である」と語っているように、その体現がよく現れている。
絶望、無力感、生への諦めと自殺願望、虚無の世界に呑まれる哲学的な映画。
ベルリン映画祭銀熊賞(審査員特別賞)受賞。
・ベロニカ・フォスのあこがれ(1982年)
本作は、「マリア・ブラウンの結婚」、「ローラ」の3作品をまとめて、ファスビンダーの「西ドイツ三部作」と呼ばれていて、37歳で早世したファスビンダーの遺作。
実在した女優ジビレ・シュミッツの人生をモデルに、かつてのナチス政権下のドイツで成功を収めた戦前の元スター女優が描かれる。
敗戦により時代は激変し、落ちぶれた女優として生活を送っていたところに魔の手が伸びる。
戦前ドイツと戦後ドイツの象徴をそれぞれ登場人物に置き換えて描く、ファスビンダーならではのユニークさが見事。
コントラストの効いたモノクロの映像に映える眩い光が印象的。
ベルリン映画祭金熊賞。
マリア・ブラウンの結婚(1979年)
・海辺のポーリーヌ(1983年)
四季の物語、四部作が有名なヌーヴェルヴァーグ最後の巨匠とも言われるエリック・ロメール。
本作は、ロメールの喜劇と格言劇シリーズの全6の第3作目。
ひと夏のバカンスとして、舞台は夏のノルマンディに避暑として訪れる6人の男女が織りなす恋愛模様。
男女の小洒落合い、会話の応酬劇、恋愛の価値観についての独自の哲学が終始映画を締め、恋愛に翻弄される大人たちを滑稽かつシニカルに描く。
ネストール・アルメンドロスの撮影による、鮮やかな色彩の美しさが記憶に残る。
ベルリン映画祭銀熊賞(監督賞)。
エリック・ロメール監督作品
コレクションする女(1967年)
冬物語(1992年)
・アリゾナ・ドリーム(1993年)
エミール・クストリッツァ監督作。
それぞれ夢と現実の間で揺れ動く、ファンタジックかつブラックコメディーの人間ドラマ。
そのキャスティングが絶妙で、ジョニー・デップ、フェイ・ダナウェイ、リリ・テイラー、ヴィンセント・ギャロらが個性的なメンバーがズラリと揃っている。
音楽はゴラン・ブレゴヴィッチが担当し、ボーカルにイギー・ポップをフューチャー。
・ミリオンダラー・ホテル(2000年)
ヴィム・ヴェンダースの隠れた名作純愛映画。
ロサンゼルスのダウンタウンにあるミリオンダラー・ホテルは、社会からはじき出された人々が住みついた最後の居場所。
オープニングからヴィム・ヴェンダースが撮るこのホテル自体がアメリカではないように感じられ、幻想的で儚い雰囲気がとても素晴らしい世界観に引き込まれる。
トムトム(ジェレミー・デイヴィス)とエロイーズ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)の繊細な心の交流、スキナー刑事(メル・ギブソン)の乱暴な介入、ミリオンダラー・ホテルのおかしな住民達のやりとりが見所。
脚本は「エンド・オブ・バイオレンス」のニコラス・クライン。原案・音楽はU2のボノ。撮影はフェドン・パパマイケル。
ベルリン映画祭銀熊賞(審査員賞)
・ゴーストライター(2010年)
ロバート・ハリスの同名小説を原作に、ロマン・ポランスキー監督、イギリスの元首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)、そのゴーストライター(ユアン・マクレガー)として採用された普通の男。
アメリカ東部の冬の島が醸し出す非日常の気配を湛えた幻惑的な舞台、常に曇や雨によるダークな映像美が映画の不気味さを盛り立て、音楽も緊迫感、閉塞感、孤立感を助長する。
これらが奏でる一級品のポリティカル・スリラーは、ミステリーとしての面白さは「ミレニアム」シリーズ・「ドラゴンタトゥーの女」レベル、サスペンスとしての面白さはヒッチコック級、規模の大きさは〇〇(自主規制)という秀悦さを持つ類稀な作品。
ベルリン映画祭銀熊賞(監督賞)。
ロマン・ポランスキー監督作品
反撥(1965年)
袋小路(1966年)
【ベルリン映画祭映画】最低限みるべきヨーロッパ映画10作品以外の映画たち
裁きは終りぬ(1951年)
ホブスンの婿選び1954年)
或る種の愛情(1962年)
野生のもだえ(1964年)
出発(1967年)
つながれたヒバリ(1969年)
カンタベリー物語(1972年)
処刑の丘(1976年)
イン・ディス・ワールド(2002年)
愛より強く(2004年)
蜂蜜(2010年)
ホフマン物語(1951年)
生の証明(1968年)
デカメロン(1970年)
ハッカリの季節(1983年)
ジュリオの当惑(1985年)
ニーチェの馬(2011年)
グレース・オブ・ゴッド 告発の時(2018年)
監督賞
銀熊(1966年)
トリコロール/白の愛(1994年)
希望のかなた(2017年)
聖週間(1996年)
汚れた血(1987年)
菖蒲(2009年)
1936年の日々(1973年)
彼女たちの舞台(1989年)
ラヴィ・ド・ボエーム(1992年)
ティグレロ 撮られなかった映画(1994年)
再現(1971年)
カリガリ賞
カサバー町(1998年)
名誉金熊賞
アヌーク・エーメ(2003年)
まとめ
【ベルリン映画祭映画】最低限みるべきヨーロッパ映画10作品
・野いちご(1958年)
・いとこ同志(1959年)
・勝手にしやがれ(1960年)
・夜(1961年)
・たぶん悪魔が(1977年)
・ベロニカ・フォスのあこがれ(1982年)
・海辺のポーリーヌ(1983年)
・アリゾナ・ドリーム(1993年)
・ミリオンダラー・ホテル(2000年)
・ゴーストライター(2010年)
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