ナルコスの登場人物とゆかいな仲間たち

「マジックリアリズムは、コロンビアが発祥の地。不可解な事が日常的に起こる。肝心な時に限って、奇妙な事が。」

【マッドマックス:フュリオサ 】シリーズのみるべき順番と関連10作品について

シリーズ最新作は深化・神化がとまらない神業

ジョージ・ミラーによる監督12作目、マッドマックスシリーズとしては1作目から45年が経ち、5作目となる最新作がいよいよ公開された。本作は、あの神映画「怒りのデス・ロード」公開から約10年という時が流れているが、熱量は冷め切っておらず、相変わらず高いままで、熱狂は終わらない。今回初のスピンオフである「フュリオサ」をより楽しむために、シリーズの振り返りと関連10作をまとめたい【永久保存版】。

 

目次

【マッドマックス:フュリオサ】最初に一言

「マッドマックス」関連作10年論について。

 

1979〜85年の「マッドマックス」オリジナル3部作以降、1998年「ベイブ/都会へ行く」、2006年「アポカリプト」、2015年「怒りのデス・ロード」、そして2024年「フュリオサ」。

 

約10年に1度の周期で訪れる奇跡。

 

そして、本作もその期待を遥かに超える大傑作であり、今年もNo.1映画に君臨するであろう確定クラス。

 

また、その証として、約10年に1回のお祭り騒ぎが再び起こっている。

 

まずは、ネット上で盛り上がっているその状態をご覧いただきたい。

 

【マッドマックス:フュリオサ】Xの声

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【マッドマックス:フュリオサ】マッドマックスシリーズの見どころ

マッドマックスシリーズといえば、荒廃した近未来〜ディストピア映画としての金字塔として知られている。

 

世界の終わりを表現する世界観は圧巻で、そのフォロワーは後を絶たない。

 

世紀末の中で登場人物たちは、ギリギリ何とか生き延びるため、本能をむき出しにした狂気の世界へと突入することになる。 

 

その徹底された世界観の中で繰り広げられる、改造車両たちが縦横無尽駆け巡る様が描かれるアクションはみるものを捉えて離さず、熱狂の渦中に引きこまれることになる。

 

【マッドマックス:フュリオサ】シリーズの創設者ジョージ・ミラー

ジョージ・ミラーは1945年3月3日生まれの現在79歳。元々はオーストラリアで医師として救急医療の仕事に従事していたが、その際に体験した凄まじい自動車事故現場での経験が映画内に盛り込まれている。

 

30代前半で「マッドマックス」1作目を製作し、このとき低予算ながらオーストラリアの興行史を塗り替えるほどの記録を打ち立て、制作費と興行収入の差がもっとも大きい映画として長らくレコードされていた。

 

常に最先端を走っていて、挑戦し続けるその姿勢は留まるところを知らず、いかに高いハードルをも乗り越えてしまう神的存在として世界中から拝められている。

 

また、シリーズが進むにつれ、神話性が増してていく象徴的なストーリーとして描かれる。

 

【マッドマックス:フュリオサ】魅力的な新旧キャラクターと登場車両たち

これまでのシリーズでのDNAが受け継がれていて、最新作は初となる試みが多く、それはキャラクター、登場車両にも現れている。

 

これまでシリーズにおいて、続編といえどもマックス以外は一新され、同じキャラや車両は登場しなかったものの、今回その融合が見事になされている。

 

主人公フュリオサを始め、多くのキャラクターで新陳代謝がなされ、逆に続投組においても新鮮に感じるのは、二度同じ役で登場するということがこれまでなかったためだ。

 

それは登場車両についても同様で、2輪車VS4輪車という難易度の高いアクションシーンが実現されている。

 

【マッドマックス:フュリオサ】作品概要

2015年に公開された「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に登場した女戦士フュリオサの若き日の物語を描く。

 

世界の崩壊から45年。自然豊かな緑の地で暮らすフュリオサの元に現れた、ディメンタス将軍が率いるバイカー軍団により、すべてを奪われてしまう。

 

ディメンタス将軍と要塞を牛耳るイモータン・ジョーが覇権を争う、狂気に満ちた世界と対峙することになる。

 

原題 Furiosa: A Mad Max Saga

製作 2024年

製作国 オーストラリア・アメリ

公開 2024年5月31日

時間 148分

 

スタッフ

監督ジョージ・ミラー

脚本ジョージ・ミラー

  ニコ・ラサウリス

製作ジョージ・ミラー

  ダグ・ミッチェル

撮影サイモン・ダガン

  エリオット・ナップマン

音楽 ジャンキーXL(トム・ホルケンボルフ)

 

【マッドマックス:フュリオサ】全部みたくなるシリーズのみるべき順番

マッドマックス:フュリオサ順番と関連作品

※画像の引用元:IMDb公式サイトより

 

まず何はともあれ、「マッドマックス」の1〜3までを順番にみるべし。

 

マッドマックス (1979年)

伝説のはじまり。

 

ジョージ・ミラーメル・ギブソン、そしてインターセプターの「マッドマックス」デビュー作にして、大出世作

 

全ての原点と言いつつ、シリーズで以降の作品における世紀末感からすれば、まだまだ現実社会としての図式が描かれている近未来世界。

 

続編としてパワーアップの典型例は、以降でたっぷりと楽しめるので、割とストレートな仕様はここでのみ味わえるという意味では貴重。

 

本シリーズはド派手なアクションがもちろん有名だが、実は結構台詞がないのも特徴的で、本作からも顕著にクールさが現れている。

 

本作においてもアクションやクラッシュシーン、爆発、バイオレンスなどは群を抜いているが、それでもシンプルさが特徴的な1作目。

 

M.F.P.の隊員には、マックスの親友グースを始め、フィフ、チャリー、ループ、サース、スカットルなど個性的なメンバーが揃う。

 

そして、ヒュー・キース・バーンが演じる、カワサキ・Z1000にまたがるトーカッターを筆頭に、ナイトライダー、ジョニー、ババなど、毎度シリーズには天晴れな敵役のメンバーが集う。

 

この時、マックスは警官で友人・家族もいて、という普通の人っぽい設定から全てを失って、狂気の世界へと誘われる。

 

マックス・ロカタンスキー、神話のはじまり。

 

誕生秘話、キャスティング、登場する改造車両、スタント、現場トラブル、スピード感のある映像にするため引くワイドに構えたトッドAOで撮った撮影、革新的で迫力があるサウンドなど制作にまつわる映像特典のDVDに収められた、ドキュメンタリー「マッドネス・オブ・マックス」も必見。

 

マッドマックス2 (1981年)

抽象化された世界がさらに神話的に機能し始めるシリーズの転換点。

 

近未来を描いた前作から時は進み、一気に荒廃したディストピア感が強まり、世紀末ムービーの先駆けとして金字塔であり、このジャンルを形成したシリーズ代表作。

 

続編となる今作は、前作の大成功を受けて制作費は10倍となったことことで、もろもろとスケールアップ。

 

黒澤明映画のように、石油を狙う暴走族と石油精製所の抗争に割って入るマックスというシンプルな構成ながら、圧巻の世界観が描かれている。

 

マックスは、相棒である犬ドッグ(オーストラリアン・キャトル・ドッグ)と共に、愛車V8インターセプターで放浪生活を送っているところから始まる。

 

荒んだアウトロー生活を送っていることがよくわかり、すっかり塞ぎ込んでいて、寡黙な一匹狼な生き方を体現し、少ない台詞から名言が多く飛び出す。

 

また、本作は敵味方関係なく、魅力に溢れる神話的なキャラクターが数多く登場する。

 

マックスの相棒としてジャイロ・キャプテンやフェラル・キッド。

 

石油精製所のリーダーパッパガーロ、女戦士 、カーマジャンなど。

 

一方、敵役もリーダー、ヒューマン・ガス筆頭に、ウェズ、トーディー、ゴールデン・ユース、ベアクロウ・モホークなど。

 

ラストのカーチェイスは、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の原型としてすでに形作られており、痺れるの一言に尽きる。

 

マッドマックス2」関連作品

七人の侍(1954年)

・用心棒(1961年)

 

マッドマックス/サンダードーム(1985年)

1.2作目の大成功を受け、製作予算も前作からさらに3倍となるが、シリーズとしてはあまり評価されていない3作目。

 

だが、次作「怒りのデス・ロード」へ継承される重要作。

 

さらに、ベイブなどファミリー映画への転換点でもある。 ジョージ・ミラーは、子どもが出来たことでファミリー映画にシフトしていったということをインタビューで語っており、ちょうどその頃に制作されたので、マッドマックスとそれらが渾然一体となっている楽しみがある。

 

時を経て、子どもたちの世話から離れたことで、新作制作に紆余曲折あったものの、約30年振りに復活させた4作目「怒りのデス・ロード」で怒涛の展開をみせる。

 

旧2作の路線への回帰と思われているが、実は今作からもその原型が色濃く反映されている。

 

それは、バータータウン、少年少女だけの最後の部族やトゥモローランドの存在。

 

「サンダードーム」あってこその「怒りのデス・ロード」なのだと認識させられ、全てはつながっていると実感する。

 

とは言え、マッドマックスシリーズは、それぞれ直接的に明確な続編としては描かれておらず、ぼんやりしており、共通点や作風の変化がミックスされている所に見応えがある。

 

まず、シリーズの特徴である行って帰ってくる話。

 

そのやや変化系であったり、神話観は加速されていたりして、前作よりも増してマックスは救世主扱いでヒーローとして扱われる。

 

また、これまでの復讐や破壊に終始せず、未来への希望を託すファンタジーな作風となっている。

 

そして、極上のエンタメであることは変わりない。

 

物々交換であったり、あるエネルギーを用いて稼働したり、その独自の決闘方法や掟が存在する街のコンセプトは、非常にユニークだ。

 

前作で大破したインターセプターの変わりに、様々な乗り物が交錯するスピード感溢れるラストの凝縮されたアクションは醍醐味だ。

 

アウンティ・エンティティ、マスター/ブラスター、ジェデダイア親子といったメインキャラクター以外にも、敵味方がやや曖昧なものの、今作でもユニークなキャラクターが多く登場する。

 

アウンティ配下のNO2的な存在としてアイアンバーンの他、ピッグキラー、ザ・コレクター、ディールグッド、ブラックフィンガー、トン・トン・タトゥー、ドクター・ディールグッドなど。

 

最後の部族においては、長老の(と言っても少女だが) サバンナ・ニックス、リーダーのスレイクの他、アンナ・ゴアンナ、スカイフィッシュ、ゲッコー、スクルールースなど。

 

これまでジョージ・ミラーと共にシリーズの創創設者であり、プロデューサーのバイロンケネディが製作直前に急死したため、映画のさいごには「バイロンに捧ぐ」という追悼文が表示される。

 

音楽は、ティナ・ターナーのオープニング曲「One of the Living」からはじまり、劇中は前2作のブライアン・メイから「アラビアのロレンス」などで知られる巨匠モーリス・ジャールへ変更。

 

バータータウン 、子供たちのテーマ、チェイスシーンなど完成度が高いスコアが並ぶ。

 

ラストは、ティナ・ターナーの主題歌「We Don't Need Another Hero」が華を添える。

 

ここで、シリーズのみる順番としては、オリジナル3部作を経てから、そのまま「怒りのデス・ロード」にいくよりも、マッドマックスシリーズ関連作品とあわせて、次の2作をチェックしたい。

 

ベイブ/都会へ行く(1998年)

クリスマスムービーと言えば、今も昔もベイブなのだが、続編の監督がジョージ・ミラーに変わり、ベイブの皮を被った、事実上の初期〜怒りのデス・ロードまでを網羅したマッドマックス全部入り仕様となっている。

 

前作は可愛らしいベイブを描いた作品だったのに対し、監督がジョージ・ミラーに変わったことにより、ベイブの皮を被ったマッドマックス映画に様変わり。

 

前作は、可愛らしいベイブが周囲の価値観を変える、というアニマルドラマだったが、狂気を加えたエンターテイメントに変貌、勢いが凄まじい。

 

マッドマックス感が溢れるシーンについて。

 

・オープニングの凱旋 怒りのデス・ロード

 

・バータータウンのような街に探しに行くと1のような警官&暴走族

 

・ベイブとブルテリアの追いかけっこ →2のスローモーション& 目の飛び出るショットのフラッシュバックの引用

 

・パーティ会場でサンダードームごっこをする

 

・井戸から水が出たり、行って帰ってくる話だったりストーリー 怒りのデス・ロード

 

・全編通じて、フリークス達の登場や小道具のセンス、サイレント映画にもなっている所

 

アポカリプト(2006年)

メル・ギブソンは、監督作品で英雄を描いたものが多いが、その中でもお気に入りの大傑作。

 

マヤ文明問題の考証は詳しくないが、全編マヤ語が用いられるなど、関心を唆られて、深掘りしたくなる題材だ。

 

ただ、総じて台詞も少ないため、その分野に明るくなくても、映画として楽しめる。

 

タイトルの黙示録とは、新しい始まりのことであり、末期社会に訪れる大惨事を意味する。

 

ある日、平和に暮らす村に、外部からの栄えた文明からの強者たちから侵略者され、捕らわれ、人間の尊厳までも失い、絶体絶命状態に陥る。 それでも主人公の不屈の魂は走ることやめることは選択しない。

 

ストレートな行って帰ってくる話、生々しいむき出しのバイオレンス描写の果てに、カタルシスが訪れる英雄譚。

 

「マッドマックス」、「ランボー」、「インディージョーズ」などに通じるアクション映画の要素や神話性を帯びている。 極限状態に陥ったときみせる本能、とまらずに動け、ひたむきに走る姿は生に輝いている。

 

そして、いよいよ勢いが止まらなくなったら、「怒りのデス・ロード」へ突入。

 

マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年)

「サンダードーム」から約30年を経て、不死鳥のごとく超絶弩級のシリーズ4作品目として甦り、ついに公開された神映画。

 

荒廃した世界、宗教観、哲学、神々しいキャラクター、マシンデザイン、怒涛のカーアクションなど細部まで突き詰められ、美しさに満ちた極まった映画として、旧シリーズを下敷きにしつつも圧倒的に凌駕し、新たな神話として創造された。

 

キャラクターは一新され、トム・ハーディシャーリーズ・セロンニコラス・ホルトが演じるマックス、フュリオサ、ニュークス、イモータン・ジョーの主要キャラクター。

 

この4人はもちろんのこと、5人のワイブズ、リクタス・エレクタス、コーパス・コロッサス、スリット、ドーフ・ウォーリアー、人食い男爵、武器将軍、オーガニック・メカニック、鉄馬の女たちなどバックストーリーまで再定義されている緻密な分析を元に構成されている。

 

そして、キャラクターと鼓動するように優れたパフォーマンスを発揮するため、登場車両たちも一心同体となる、インターセプターの改造前後、ウォー・リグ、ニュークス・カー、ギガホース、ビッグフット、ドーフ・ワゴン、リムジン、ザ・ピースメーカー、改造オートバイなどが激しくぶつかりあい、クラッシュするさまは多くが実写だ。

 

細かい点で言えば、タトゥーからスカリフィケーションへと変換されているように、大体にして細々とアップデートが隅々まで行き届いている。

 

ジョージ・ミラーが語っているように、熱狂的なロックとオペラの中間のような、ノンストップでアクションが繰り広げられつつ、視覚的な音楽映画として誘われる。

 

荒れ果てた大地、汚染された大気、失われた秩序、滅んだ文明。

 

水、ガソリン、食糧、血液を求めて争いが繰り広げ、暴力が吹き荒れ、混沌とした無法地帯は情け無用の弱肉強食。

 

それなのに、砂漠を駆ける狂気の大爆走は、その神々しさ、崇高さを醸し出す。

 

また、究極の生と死の境界でのギリギリの生き様こそ、生を実感できるし、これほどまでに美しく、人を惹きつけるということを改めて実感させられるし、その儚さを讃えたい。

 

故にこの映画は常に、公然と輝く生命たちが本能に直接訴えかけてくる、多くの言葉は不要、兎角作品をみるべし。

 

マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディション(2015年)

ジョージ・ミラー監督が本作のベスト・バージョンと豪語するのが、2017年1月14日に公開されたモノクロ版。

 

サイレント映画にも造形が深いジョージ・ミラー は、常に台詞ではなく、画で語ることを追求してきたがゆえに、本バージョンでもその説得力の高さを証明した。

 

色が削ぎ落とされたことによる恩恵は、より強調された世界観へ引き込まれ、さらなる作品世界へ没入することができる必見のバージョン。

 

「怒りのデス・ロード」関連作品

・最狂自動車レース(1924年

・ロイドの福の神(1926年) 

キートンの大列車追跡(1926年) 

駅馬車(1939年)

ベン・ハー(1959年)

 

ついに、ここで満を持して、最新作の「フュリオサ」を迎えることになる。

 

マッドマックス:フュリオサ (2024年)

マッドマックスシリーズ初のスピンオフは、深化と神化による驚愕の神業。

 

まずは深化について。マックスの不在、女性キャラクターが主人公、「怒りのデス・ロード」の前日譚、2輪車VS4輪車といった試みがなされ、そのハードルの高さを軽々しく超えて、さらなる楽しみが加わった大傑作であった。

 

また、スピンオフ限定として、「怒りのデス・ロード」からの拡張世界としての機能。

 

マッドマックスシリーズはこれまで続編として作られていながらも、緩やかなつながりしか持たず、直接作品同士が結びつかないという、独特な特徴があった。

 

今回は、初のスピンオフということもあり、その特徴を破った楽しみがあった。

 

それは「怒りのデス・ロード」をベースにした、キャラクラーたちの深掘り、新旧キャラ・登場車両の融合とみせかたの変換、シタデル砦・ガスタウン・弾薬畑の全貌公開などによる可能性の拡大。

 

逆に失ってしまった出演者たちにも追討を捧げたい。

 

ヒュー・キース=バーン(トーカッター&イモータン・ジョー役)、リチャード・カーター(武器将軍役)、クウェン・ティン・ケニハン(コーパス・コロッサス役)など。

 

本作を鑑賞してから「フュリオサ」や「怒りのデス・ロード」のさらなるスピンオフにについて、あれこれ妄想を膨らませられる余地があることもシリーズの魅力となっている。

 

とはいえ、以降の作品はかねてより、続編の「Mad Max:The Wasteland」(仮称)として伝えられているが、製作・公開時期は現段階では未定。

 

また、大方の予想をいい意味で裏切ってくれた「怒りのデス・ロード」とは違った路線であったことも、同じことをしないジョージ・ミラーらしく、その構成も見事にはまっていて、違った形で映画内に引き込まれ、緊張感が途切れず、没頭した。

 

そして神化について。物語として神話性を推し進めた、神化といった形容の仕方がしっくりくる。

 

神話性における物語の向上として、マッドマックス初となる章立て。

 

これは本作でフュリオサの15年以上の物語を描くという長尺仕様を紡ぐために必要があったとれている新たな、まずはこれにより冒頭から神話感が高まった。

 

キーワードになるのがジョージ・ミラーの前作「アラビアンナイト 三千年の願い」。

 

「マッドマックス」と対照的な煌びやかな世界観で魔人が登場するというものであったが、共通するのはその神話性である。

 

物語が持つ力について、寓意としての意味が込められており、非日常であったり、極限状態に陥った時だったりに、現実と向き合って人間としての生きるために、その常軌を逸する世界で正気・狂気を行き来する中で、自分を保つ方法として機能するという意味において、「アラビアンナイト 三千年の願い」と同様に扱われている。

 

これこそジョージ・ミラーが常にテーマとして求めてきた神話性についての取り組みであり、高次元で体現されている証、それが作品として公開されることで結実している。

 

いずれにせよ、かなり限られた条件、制約、プレッシャーの中、それらを押しのけて大傑作を達成した所業を目のあたりにした。

 

ジョージ・ミラーの神業をまたもリアルタイムで体験できたことは非常に喜ばしい。

 

フュリオサ関連作品

アラビアンナイト 三千年の願い(2022年)

 

マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年)

 

みるべき順番として、シリーズの特徴である行って帰ってくる形式を踏襲して、「フュリオサ」鑑賞後に「怒りのデス・ロード」へ戻りたい。

 

 「フュリオサ」を鑑賞することで、様々な視点が増えたり、思い入れが深まったり、これまでとはいい意味で違った見方となり、さらに感動が増し増しとなる、というのが最大のポイントだ。

 

具体的には、緑の地に固執する納得感の深まり、 イモータン・ジョーの追跡・ 人喰い男爵や武器将軍が合流、スナイパーの腕前などフィリオサの母親譲りのサバイバル術や戦闘力の高さ、鉄馬の女たちとの合流シーン、フュリオサの絶望による雄叫びなど背景の合致。

 

エンドクレジット:約束の地はあるのか… 自分を探し求め さまよう この荒野の果てに 「歴史を作りし者」。

 

このラストに突きつけられる字幕については「怒りのデス・ロード」の時でさえも、これまでのシーンの数々のフラッシュバックが胸に突き刺さったが、さらに交錯する情報量の拡大により、その想いは測り知れないものとなった。

 

マッドマックス:フュリオサ (2024年)

 

今回の総仕上げとして、2回目の劇場鑑賞をおすすめしたい。

 

初見時よりは衝撃度は薄れてはしまうのは致し方ないとしても、落ち着いてみれたので、諸々と再確認したかったところがあってすっきりした。

 

「怒りのデス・ロード」→「フュリオサ 」→「怒りのデス・ロード」→「フュリオサ 」といったエンドレスなリピート再生(脳内も含む)は、これからの恒例行事となる。

 

今回もありがとう、ジョージ・ミラー

 

これらの果てに次作は女性3世代目の登場を予感させられた。 ワイブズであるダグの子ども(イモータン・ジョーの長女?)、フュリオサの子ども?だったりするのだろうか。

 

いずれにしてもまた最高の作品として帰って来てくれるはずだ。

 

【マッドマックス:フュリオサ】キャラクター紹介

・フュリオサ(アリーラ・ブラウン/アニャ・テイラー=ジョイ)

本作の主人公であり、幼少期にディメンタス一派に故郷から拉致され、帰郷を誓い彷徨い続ける。

 

ディメンタスやイモータン・ジョーの間を行ったり来たりされられるうちに、うちに秘めるマッドが呼び起こされることによる、本作は彼女の叙事詩だ。

 

武装バイク集団

・ディメンタス(クリス・ヘムズワース

新キャラ、マッドマックスシリーズ的にシリーズ屈指で残忍な描写が多く、わかりやすい織田信長的なキャラクター。

 

その反面、自らを冠する呼び名がころころ変わる気分屋であり、部下にもあだ名をつけ、幼稚な面も露呈している。

 

・リズデール・ペル(ラッキー・ヒューム)

新キャラ、ディメンタスの右腕・隻眼のバイカー。

 

・賢者(ジョージ・シェフツォフ)

新キャラ、ディメンタスの生き字引。

 

・オーガニック・メカニック(アンガス・サンプソン)  

「怒りのデス・ロード」でおなじみのメカニックは、このときディメンタス側近のひとり。

 

・オクトボス(ゴラン・D・クルート)

新キャラ、ディメンタスの幹部。

 

 ・スメッグ (デヴィッド・コリンズ)

新キャラ、ディメンタスの幹部。 

 

・ミスター・ノートンエルサ・パタキー

新キャラ、ディメンタスの女性部下。

 

 ・ミスター・ダビッドソン (ガイ・スペンス)

新キャラ、ディメンタスの部下。

 

 ・ミスター・ハーレー( イアン・ロバーツ)

新キャラ、ディメンタスの部下。

 

・トー・ジャム( デヴィッド・フィールド)

新キャラ、ディメンタスの部下。

 

最初にフィリオサを誘拐し、ディメンタスたちの元に生還したメンバー。

 

シタデル砦まわりの住人たち

・イモータン・ジョー(ラッキー・ヒューム)

「怒りのデスロード」時より若く美的。この頃の方が落ち着いていて、統制、陣頭指揮も的確、才気溢れるカリスマ性を感じる。ラッキー・ヒュームが一人二役で演じる。

 

おなじみのまわりの仲間たちである人食い男爵、武器将軍、リクタス、オーガニック・メカニックとの連携も抜かりない、もっとみたかったが出番は少なめ。

 

・スクロータスジョシュ・ヘルマン

新キャラだが、ゲームで登場済み。イモータン・ジョー三男という設定で、気性が荒く短気。リクタスとキャラが被っている。

 

演じるのは、「怒りのデス・ロード」のスリット役、ジョシュ・ヘルマン

 

・ジャック(トム・バーク)

新キャラ、シタデルのウォー・ボーイズを率いる警護隊長。はちゃめちゃな人物が多い中、極めてまともな大人である。

 

渋めのルックスも相まっておそらく人気が爆発する可能性が極めて大きい。

 

・ウォー・バップ(クァデン・ベイルズ)

新キャラ、ウォー・タンクの守り神として、車両に秘密基地的なコックピット内に鎮座する低身長のキャラクター。

 

・ローン・ウォー・ボーイ(ショーン・ミリス)

新キャラ、頭に矢が刺さっていて、口が裂けた後があるウォー・ボーイズ。

 

砦へ救援信号を送っているところで、ディメンタスたちに遭遇する。

 

緑の地

・メリー・ジャバサ(チャーリー・フレイザ)

新キャラではあるが前作から言及はされていたフュリオサの母。今回、ジャックとともに勝ち組。そのカッコよすぎるキャラクターにより、大人気となるはず。

 

鉄馬の女たちのリーダー。個人的には彼女の前日譚がいちばんみたい。

 

・鉄馬の女たちの長(エルサ・パタキー

新キャラ、クリス・ヘムズワースのパートナー、エルサ・パタキー一人二役で演じる。

 

バルキリー(Dylam Adonis)

「怒りのデス・ロード」にも登場した女性、今回は少女時代のみ出演。

 

【マッドマックス:フュリオサ】名場面ハイライト(評価・解説・考察)ネタバレ

本作の構成は、5章立てとなっており、約30分毎に異なるみせ場があるので、それぞれ振り返りたい。

 

第1章 メリー・ジャバサの追跡

 

幼少期のフィリオサがあっという間に、ディメンタス一派に連れ去られ、その追跡に乗りだすメリー・ジャバサ。

 

今回のMVP的な活躍をみせる、冒頭から緊張感が溢れる痺れるシーンの連続だ。

 

愛する娘の奪還と緑の地の秘密保持のため、馬で追跡から、バイクを乗り継ぎ、様々な武器で次々とディメンタス配下の部下たちを粛清。

 

その類いまれな戦闘能力、サバイバル術、そしてメンタルの強さはシリーズにおいても群を抜いている。

 

出演時間が短すぎたのが残念だが、フュリオサの母という証明は否が応でも成立させ、むしろみる者を魅了させ、もっと彼女の出演シーンをみたいという愛すべきキャラクター造形として大成功している。

 

第2章 イモータン・ジョーVSディメンタス

 

シリーズ初となる悪vs悪の対立。

 

初鑑賞の時は、ディメンタスの登場そこそこに、いきなりそこにぶつけるとは、びっくりして、ワクワクしたが、結果はイモータン・ジョーの圧勝。

 

悪として格の違いをみせつけ、組織力、統率力、交渉・人心掌握術、戦略・戦術など全て上回り、はっきり決着はつけずに、イモータン・ジョーの掌で転がされている状態となる。

 

ディメンタスは以後、コミカルさが増していくことになる。

 

第3章 15分間のノンストップアクション 

 

章が変わり、はっきりではなく、グラデーション的にフィリオサがアニャに変更となり、警備隊長のジャックも登場する。

 

今回、完全に盲点となっていたジャックという存在。マックスが不在の中、その代役としての役割が特徴的。

 

但し、オリジナル3部作のメル・ギブソン的なマックスではなく、「怒りのデス・ロード」のトム・ハーディーのマックスと重なる。

 

その要所を抑えた役所は、メリー・ジャバサとは違った意味で、特にフィリオサの心の支柱となるMVP的な活躍を遂げた。

 

こちらも背景が気になりまくるキャラクターであり、いい意味で完全に勝ち逃げ状態だ。

 

また、注目のカーアクションについては、「怒りのデス・ロード」で度肝を抜かれ、特徴的でもあったほぼ全編に渡って繰り広げられるのが、ハイオク仕様のカーチェイス

 

本作では、作品そのものがそういった仕様にはなっていないが、これまでとは違った視点で展開されるために目が離せない。

 

マッドマックス印の勢いはそのままに、スケール感が飛躍的にアップし、フィリオサが戦える力を備えていることをみせつける。

 

このことにより、フェミニズムを確立した名場面として、ウォー・タンクが疾走するノンスップカーアクションが素晴らしい。

 

第4賞 いかにして彼女はフュリオサになったのか

 

第4章が今回いちばん時間も長く、見どころが詰まっている、ピークの章となっている。

 

弾薬畑の全貌が現れたり、フィリオサとジャックが逃亡したり、全面戦争といった山場が多い。

 

その中で、メインとなるのがフュリオサ誕生となる瞬間だ。

 

逃亡劇の失敗の果てに、片手を失った経緯が描かれ、ディメンタスから全速で離れていく中、マックスと思われしき人物に救済され、シタデル砦で目が覚める。

 

章立ての構成のほか、緑の地で摘んでいる果物、楽園からの追放、磔、星図、鋼製の義手、40日戦争、ナレーションの声、ある絵画が用いられるなどにより、ついに変貌を遂げる。

 

それらを経て、フュリオサは暗黒の天使と例えられる(黙示録の四騎士は、新約聖書の「ヨハネの黙示録」に登場する神の使いを示す)。

 

だからこそ、今回過酷すぎる幼少期を通して、生と死を巡り絶望の中から這い上がったフュリオサとして完成された彼女は、神々しさに満ちているし、英雄としての誕生として説得力を持って描かれている。

 

第5賞 リメンバー・ミー

 

全てが片付き、フィリオサがディメンタスに語りかける言葉は、奇しくもイモータン・ジョーへ放った最後の言葉と同じものだった。

 

復讐を遂げた彼女は、緑の地を目指し、ワイブスとウォー・タンクに乗り込み、幕が閉じる。

 

【マッドマックス:フュリオサ】マッドマックスシリーズひとり総選挙

さいごに、最新作公開を記念して、ひとり総選挙を実施。

 

V8を讃えよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

【マッドマックス:フュリオサ】全部みたくなるシリーズのみるべき順番と関連10作品

 

シリーズのみるべき順番

・マッドマックス (1979年)

マッドマックス2 (1981年)

マッドマックス/サンダードーム(1985年)

・ベイブ/都会へ行く(1998年)

アポカリプト(2006年)

マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年)

マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディション(2015年)

・マッドマックス:フュリオサ (2024年)

マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年)

・マッドマックス:フュリオサ (2024年)

 

シリーズの関連10作品

七人の侍(1954年)

・用心棒(1961年)

・ベイブ/都会へ行く(1998年)

アポカリプト(2006年)

・最狂自動車レース(1924年)

・ロイドの福の神(1926年)

キートンの大列車追跡(1926年)

駅馬車(1939年)

ベン・ハー(1959年)

アラビアンナイト 三千年の願い(2022年)

 

個人的【ジョージ・ミラー映画】ランキング

1.マッドマックス 怒りのデス・ロード

2.マッドマックス:フュリオサ

3.マッドマックス2

4.マッドマックス

5.マッドマックス/サンダードーム

6.ベイブ/都会へ行く

7.アラビアンナイト 三千年の願い

8.イーストウィックの魔女たち

 ロレンツォのオイル/命の詩

10.ハッピー フィート

 

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