今こそみるべき【日本映画】の三大巨匠映画!
【日本映画】の三大巨匠、黒澤明・小津安二郎・溝口健二。実はみた事ないかも、って人はいませんか?あの日本中が映画に熱狂した、最盛期である1950年代前後という黄金時代。その時代に製作され、今では撮れない、世界に誇る【日本映画】。日本人なら絶対必見!!10作品他全50作品【永久保存版】。
目次
- 日本が世界に誇る【日本映画】の黄金時代
- 黒澤明(1910年3月23日〜1998年9月6日)
- 小津安次郎(1903年12月12日〜1963年12月12日)
- 溝口健二(1898年5月16日〜1956年8月24日)
- 三大巨匠以外の黄金時代を代表する【日本映画】
- まとめ
日本が世界に誇る【日本映画】の黄金時代
※画像の引用元:IMDb公式サイトより(以下同様)
戦後まもない日本は、観客動員数も年間10億人超を記録し、日本中が映画に熱狂していた黄金時代。
その頃に撮られた映画は今も色あせないし、むしろ今は撮れない写真が満載で、世界的評価も得ていた!
その時代の生き証人である映画たちを今こそ振り返りたい。
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黒澤明(1910年3月23日〜1998年9月6日)
まずは、黒澤明。
黒澤映画の醍醐味は、ダイナミックな画が魅力的。
また、マルチカメラ撮影&パンフォーカスを駆使してからは、よりスピーディかつスケール大きいアクション映画に活かされている。
海外映画を意識・対抗し、革命的なエンターテイメントの数々を撮り、世界の映画に影響を与えた、世界のクロサワたる所以となっている。
ここでは、三船敏郎の出演作を中心に厳選して紹介。
1948年 醉いどれ天使(東宝)
黒澤、志村、三船が初合流する記念すべき映画。
黒澤が戦後の荒廃した闇市を禍々しいインパクトあるダイナミックさで描き、ジャングル・ブギなど当時の流行歌で時代性を現わしている音楽は早坂文雄。
正義感の強いアル中の医者を志村、異様なギラつきを放つ結核病みのヤクザ三船のコントラスト。
黒澤が三船のポテンシャルの高さを見抜いた先見性の明は、本作で照明された。
初登場シーンからして、まとう空気の違う異次元さに痺れる!
時代も超えてもなお、天性の持ってる男を拝む事が出来る。
暴れ狂う動の部分と、内面の繊細さのバランスが絶妙。
この後の三船は完成されたカッコよさがあるが、この時の荒削りの色気はこの作品ならでは。
日本一スクリーンに映える男の尖りまくった原点。
時代を反映させた、生と死の対比表現を重ね、戦後まもない頃のバイタリティー溢れる、今では絶対に撮ることができない映画。
1950年 羅生門(大映)
シンプルさを突き詰めた最もアートな黒澤映画。
現在パートは広大な羅生門と大雨。
過去パートの回想シーンは奥までピントのあった森林から覗く幻想的な木漏れ日による立体的な撮影。
豪華出演者たちによる羅生門スタイルを確立させた砂煙が立ちこもる殺風景な裁判スタイル。
この3場面が進行していく中、誰が真実で、誰が嘘をついているのか?
心理合戦が引き立つ編集。
音楽の力も相まって、引きずり込む力は凄まじい。
原作ミックスさせた脚本の賜物。
動の三船、静の森雅之の対比、白馬に跨った男を振り回す京マチ子の狂言回し的ハマり役。
第3者視点の志村のうまさも一際輝き、引き立て力、牽引力、統率力、推進力など映画を動かす原動力そのものだ。
美術、衣装を含めた平安時代の再現性の高さは、黒沢組の技術の総力が結実した1つの到達点。
日本初のヴェネツィア金獅子賞(グランプリ)に輝いた大映時代の黒澤映画。
世界に誇る日本映画代表の1作だ。
1954年 七人の侍(東宝)
日本が世界に誇る国宝級の大傑作ながら、人によってはとまどう可能性があるかも知れないので、解決策を記しておく。
この映画が見づらい!という問題になるのは、大きく別けて3つあると思っている。
①台詞が聞き取りづらい。
②人物の区別がしづらい。
③上映時間が長い。
解決策は次の通り。
①台詞が聞き取りづらい
これに関しては、他の黒沢作品でもある事なので、慣れるまでは字幕で解決するしかない。
②人物の区別がしづらい。
「七人の侍」の世界は、大きく別けて、3種類の人間に別けられている。
野武士(悪役)・農民・侍というシンプルな種族別け。
しかし、俳優が昔の人だし、白黒なので、判別しづらいかもしれない。
これを解決するのは、まずはメインキャラクターであるの「七人の侍」を鑑賞前に事前にチェックしておく必要がある。
次に、野武士に関してはあまり登場しないが、基本的には兜を身につけており、派手な格好をしている。
そして、貧乏なのが農民(野武士に奪われてしまっているので、生活レベルが相当苦しく、身も心も冷えきっている)。
このように覚えておけば、こちらも解決する。
③上映時間が長い
こちらに関しては、207分という時間になっているが個人的には足りないぐらい。
ずっと観ていたいと思うほどだけど、脳内整理がついていないとこの問題が生じる可能性がある。
これに関しては、鑑賞前にこの映画が3幕構成になっていることを理解しておけば問題ない。
以下ややネタバレなので注意。
1幕目は、農民達が街へ出て侍を集める。
2幕目は、農民達が侍たちと一緒に村へ戻り、野武士と戦う準備をする。
3幕目は、侍と農民VS野武士との戦い。
この3幕構成の大枠を抑えておけば大丈夫。
前提条件をクリアして、「七人の侍」を見れば、この時代にこんな画期的なエンターテイメント映画が撮られていたなんて凄い!!となるはず。
黒澤明的な日本を代表する大作が持つダイナミックな映像によるアクションシーンの数々。
特に、最後ラストの決戦は、リアリズム溢れる豪雨の混戦模様を複数カメラの同時撮影の成果が現れている。
ヒューマニズムに富んだ緻密な脚本による感動的な名場面の数々が印象に残る。
大胆と繊細さの強弱を徹底的に配慮した鳴り止まない音楽が刺激をかき立てる。
野武士戦をディテールまで想定し、地の利を活かした戦略。
その人物配置による戦術の抜かりなさ。
決戦を盛り上げるため、あらゆる天候や自然の要素(塵、霧、雨、雷、炎など)の移り変わりの演出。
今では撮れないし、黒澤明にしか撮れなかった空前絶後の超大作侍映画。
世界映画史上最高のアクション映画。
この7年後、アメリカの西部劇で「荒野の七人」としてリメイクされる。
その後も世界中でお手本とされる、エンターテイメントの金字塔。
1961年 用心棒(東宝=黒澤プロ)
佐藤勝のエンタメ性の高い音楽が盛り上がり効果を助長し、緊張感を持続している。
撮影は宮川一夫・斉藤孝雄によるもの。
乾風が吹き、土埃が舞い、さらなる荒廃感を出すために冒頭、犬が手首をくわえて通り過ぎる。
緊迫感が溢れ、殺気が漲っている町に放り込まれた臨場感を味わえる。
三船が演じる浪人が、通りすがりの宿場町で対立するヤクザ双方とも潰すために立ち回る、ダークヒーローを生み出した。
仲代達矢演じる悪役もニヒルで、着流しにマフラーと銃で存在感を放っている。
殺陣のシーンは、とにかくダイナミックかつスピーディ。
刀の斬撃音についても、本作で初めて使用された革新性がある。
後に、イタリア製西部劇「荒野の用心棒」としてリメイクされた。
三十郎が名を変えて臨んだ「用心棒」の続編。
原作:山本周五郎「日々平安」、三十郎と加山雄三ら演じる九人の若侍との共闘が描かれる。
仲代達矢の室戸半兵衛、コメディリリーフ、パート・カラーなど語り口は、枚挙にいとまがない。
本作の白眉は、世界初のスプラッター!
その衝撃的なクライマックスに世界中が刮目したラストシーン。
1963年 天国と地獄(東宝=黒澤プロ)
いびつなバランスを持った、「野良犬」の進化系となる極上の面白さのサスペンス映画。
前半1時間は徹底した静を描く会議室映画。
三船演じる会社役員の揺れ動く心理的葛藤がじっくりと描かれる。
前半でためにためて、我慢に我慢を重ねた演出から一転。
当時、日本で最速だった特急こだまのアングルと轟音で、映画は打って変わって物語が動き出し静から動へと一変する。
映画後半は、作中で舞台となった昭和30年代の横浜。
ロケとセットで構築された「天国と地獄」(パラサイトの元ネタになった家の配置の設定)を這いずり回る、犯人探しの捜査シーンへと突入する。
クライマックスが随所に見られる。
象徴的なこだまの音と、有名なパート・カラーの画の使い方、仲代達矢演じる刑事の歪んだ正義感を露出する犯人追跡方法、ラストの衝撃的な幕切れなど。
模倣犯が続出し、刑法改正されるという社会的な影響力が絶大な誘拐型サスペンスの金字塔。
1965年 赤ひげ(東宝=黒澤プロ)
そして、「酔いどれ天使」では、志村喬から三船敏郎への世代交代が行われた時と重ねて描かれる継承物語。
誠に天晴れな映画だ!
他にもオススメの黒沢作品
小津安次郎(1903年12月12日〜1963年12月12日)
次に、小津安次郎。
小津と言えば、ローアングルからのカメラが動かないながらも細部まで底的に設計され尽くした格式高い画作り。
また、当時の中流階級を描いた日常生活を描くのが特徴的。
黒沢と対極の古きよき時代の日本映画の完成形を目指しながらも、後の世界の映画人に多大なる影響を与え、世界的な名声を確立した。
1941年 戸田家の兄妹(松竹)
小津の「晩春」から溯ること数年前、戦前の小田作品で、実は「東京物語」の原型が完成していた!
むしろ、個人的にはこちらの方が断然面白い!!
戸田家は裕福な家庭で、長男、長女、次男、次女、三女の五人のきょうだいがいる。
母の還暦祝いで家族が集まるが、戸田家の当主が亡くなってしまう。
それまで、とてもうまくいっていた家族関係が、突然崩壊していく。
といった「東京物語」の先駆け的映画。
しかも、小津映画には多い虚無感ではなく、珍しく強いカタルシスがある。
そして、ラストにほんの少しだけ動くカメラが珍しく、初々しく感じる小津作品。
音楽も素晴らしいが、ちょっと台詞が聞き取りづらいのが玉に瑕(字幕必須)。
しかしながら、個人的には小津作品のベスト。
1953年 東京物語(松竹)
松竹で小津が撮った本作は、2012年の世界の映画監督が選ぶオールベスト1位に選ばれた。
偉大なる日本映画黄金期の金字塔。
小津組の代表である笠智衆が、当時40代後半ながら老人の役を違和感なく演じきり、原節子は紀子3部作の締めくくりに相応しく本作での存在感は、圧巻の一言。
他にも小津組の常連キャストが揃い(東山千栄子・杉村春子・東野英治郎ら)や香川京子まで出演し、スタッフの技術力の最高潮で、神がかりのバランスの日本代表作品。
筆舌に尽くしがたい、大傑作中の大傑作。
個人的にはこの境地の作品に手を伸ばすのに時間がかかったが、観始めたら一発でやられてしまった!
日本人こそ、愛すべき作品で、現にそうなっているし、これからもそうでいて欲しい。
古き良き時代の日本映画のアーカイブ。
小津作品の不変性に惚れ惚れする。
他にもオススメの小津作品
溝口健二(1898年5月16日〜1956年8月24日)
最後に溝口健二。
アングルにこだわった小津とは対照的に、カメラワークにこだわる事で知られる溝口。
長回しを多用した流麗なカメラワークで、絵画的日本様式美的を追求。
溝口健二の美への徹底追及により、ヴェネツィア3連続受賞の快挙を成し遂げる。
世界中から今なお愛され続けている、世界に誇る日本映画の最高傑作の1作。
白黒の幽玄な映像美は、当時大映の日本が誇る名撮影監督宮川一夫による賜。
以降溝口作品との連携が多くなる。
特に、霧が立ち込める琵琶湖で船を漕ぐシーンは、脳裏に焼きつく異次元さで、息を飲むほどの美しい。
早坂文雄の音楽とも融合し、全編が日本の様式美で貫かれている。
小津、黒澤映画でも主演を務めた京マチ子は、文字通り森雅之を食ってしまっている存在感。
京マチ子なしでは、この映画が成り立たない。
そのぐらいの説得力があり、男を狂わせる妖艶さが際立っている。
溝口作品には、ある種の崇高なものに似た、畏敬の念を抱かずにはいられない。
マイベスト溝口健二映画。
他にもオススメの溝口作品
三大巨匠以外の黄金時代を代表する【日本映画】
他にも同時代を生きた映画人たちの作品も紹介!
・稲妻 1952年
・山の音 1954年
・ある殺し屋 1967年
かつて存在した日本映画の黄金時代。
今では撮れない作品を学べば学ぶほど、もっともっと映画を深く楽しめるようになる。
新作映画の公開が少しずつ戻ってきているので、過去作品の見直しの参考になれば。