ナルコスの登場人物とゆかいな仲間たち

「マジックリアリズムは、コロンビアが発祥の地。不可解な事が日常的に起こる。肝心な時に限って、奇妙な事が。」

映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】(あらすじ・ネタバレ)


イタリアの名手が撮るメキシコ麻薬戦争続編

スタッフは脚本テイラー・シェリダン以外入れ替わり。監督ステファノ・ソッリマ、撮影ダリウス・ウォルスキー、音楽ヒドゥル・グドナドッティル。このアンサンブルが交差する時、信じられない生々しい描写が連続する。緊張感は振り切れマックス、‪前作とは異なるテイストだが(むしろこっちのが好き)、圧倒的な続編となっている【永久保存版】。

 

目次

映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】より楽しむための前作までのまとめ

ボーダーライン(2015年)

Sicario (2015)

※画像の引用元:IMDb公式サイトより(以下同様)

 

前作の監督である、ドゥニ・ヴィルヌーブ による、ドゥニ・ヴィルヌーブ の最高傑作であり、そしてドゥニ・ヴィルヌーブ らしい特殊構造を持った映画。

 

ボーダーラインについては、こちらをチェック↓

narcos.hatenablog.com

 

暗黒街(2015年) 

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本作の監督に大抜擢された、ステファノ・ソッリマ

 

イタリアで撮った「暗黒街」は、イタリアン・フィルム・ノワールの新たなる大傑作!注目。 

 

暗黒街については、こちらをチェック↓

narcos.hatenablog.com

 

本作でも、脚本を務めたテイラー・シェリダンのフロンティア3部作は要チェック。

「ボーダーライン」「最後の追跡」「ウインド・リバー」。

 

最後の追跡(2016年)

Hell or High Water (2016) 

「ボーダーライン」の脚本を手掛け、今をときめく脚本家となった、テイラー・シェリダン

 
本作でもアカデミー4部門(作品賞、助演男優賞脚本賞編集賞)ノミネートの快挙の脚本に、たずさわる。
 
銀行強盗兄弟(クリス・パインベン・フォスター)、そして彼らを追う、引退間近のテキサス・レンジャー(ジェフ・ブリッジス&ギル・バーミンガム)。
 

本作はテキサスに映える画と音が無骨な映画。

 

そのテキサスにはびこる病魔として先祖代々引き継がれてしまう、貧困というテーマを深掘りし背景となっている見事。


オープニングからして緊張と緩和のバランスが絶妙。

 

コンビ&コンビのダブルバディーによる追跡と逃亡、ロードムービーが心地よい


古き良き、現代西部劇を蘇らせたシェリダンの辺境3部作。

 
配信当時、現代版西部劇として、Netflixオリジナル映画として衝撃をもたらせた。

  

ウインド・リバー(2017年)

Jeremy Renner in Wind River (2017)

テイラー・シェリダン作品共通の、米の辺境シリーズ3部作(ボーダーライン・最後の追跡ウインド・リバー)。

 

ネイティブ・アメリカンの保留地を舞台とした、3部作に共通する民族問題をアメリカ西部劇にして再現。

 

厳寒地獄のスノーノワール

 

これでもう「ボーダーライン」、「最後の追跡」の脚本の人とか、言われないテイラー・シェリダンの堂々たる監督デビュー作品。

 

主演はMCU組でもある、ジェレミー・レナーエリザベス・オルセン

 

ウインド・リバー」のテイラー・シェリダンと記憶される代表作に仕上がった。

 

2018年の酷暑だった公開に相応しくこれこそ心身共に効く、−30℃の世界感を味わうには、冷房効き過ぎでの室内鑑賞がちょうどいい。

 

映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】作品概要

原題 Sicario: Day of the Soldado

製作 2018年

製作国 アメリ

 

監督 ステファノ・ソッリマ
製作 ベイジル・イバニク
   エドワード・L・マクドネル
   モリー・スミス
   サッド・ラッキンビル
   トレント・ラッキンビル

脚本 テイラー・シェリダン
撮影 ダリウス・ウォルスキー
音楽 ヒドゥル・グドナドッティル

 

映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】あらすじ・ネタバレ

テキサス州アメリカ・メキシコの国境。

 

メキシコの麻薬カルテルの収入源は麻薬だけでなく、密入国者からの手数料も大きな割合を占めるようになっており、密入国者達が後を絶たない。

 

国境警備隊密入国者を補足・拘束するが、1人の男が国境を越えを失敗し、起爆剤とともに爆死する。

 

ミズーリ州カンザスシティでは、テログループがショッピングストア内で自爆テロを行っており、子供を含め多数の死傷者が発生。

 

これにより、アメリカ政府はメキシコからテロリストの密入国が行われているのではという懸念から、CIA特別捜査官マット・グレイバーを雇い、テロリストを密入国させていると疑われるメキシコ麻薬カルテル殲滅に挑む。

 

任務を命じられたマットは、ストア爆発事件の犯人と思われる密入国テロリストの関係者として、ソマリアの海賊のボスであるバシーを尋問する。

 

マットはバシーからメキシコのレイエスカルテルからの資金でイエメンからメキシコ行きの輸送船を見逃す契約をしていたという情報を得る。

 

メキシコでは、ミゲルという青年が学校をサボり従兄弟のヘクターと国境付近で大麻を吸っており、ヘクターはミゲルにマタモロス・カルテルに入ると大金が稼げると誘われ、渋々ながらも参加することに決める。

 

レイエスカルテルの情報を得たマットは、コロンビアにいる旧知の仲であるアレハンドロに協力を依頼。

 

マットからルール無用の自由を与えられたアレハンドロは、アメリカ政府は表に出ずに、麻薬カルテル同士の抗争(レイエスカルテルと敵対している、国境で密入国を仕切っているマタモロス・カルテルとの同士討ち)へと仕向ける戦略を立てる。

 

そのためには、どうしても極秘裏に麻薬王ルロス・レイエスの娘イサベル・レイエスの誘拐が必要だった。

 

事のはじめに、マタモロス・カルテルの弁護士を急襲・粛正(予告編でも使われて話題となっていた衝撃の“デル・トロ撃ち”が披露される)を実行し、抗争の火種をつける。

 

イサベル誘拐も予定通り順調に進む。

 

一方、ミゲルはヘクターに連れられ、マタモロス・カルテルのボスであるガヨと会い、密入国者の管理を任されるようになる。

 

イサベル誘拐護送中、マットのチームはレイエスカルテルの息がかかったにメキシコ連邦警察待ち伏せされ襲撃を受けてしまい、激しい銃撃戦となる。

 

このどたばたに紛れて、イサベルは逃走してしまう。ここでマットのチームは2手に別れ、相互の様子が交互に描かれる。

 

アレハンドロは1人イザベルを追跡、負傷者が出たマットのチームは国境を越えて作戦拠点に引き返すことになる。

 

自体は悪化する一方で、メキシコ警官を25人も殺した事と、カンザスでの自爆テロの実行犯は麻薬カルテルとは無関係だったことを知らされる。

 

メキシコとの関係悪化を恐れたアメリカ政府が一方的に作戦を中止させ、オペレーション停止の証拠人としてアレハンドロとイザベルを殺害するよう命令を下す。

 

政府の作戦中止に翻弄され、アレハンドロとイサベル殺害をためらうマット。アレハンドロも、イザベルを殺害しろと言われながらも、自分の娘の姿をイサベルに重ね救おうとする。

 

イザベルをアメリカに蜜入国させる事ができれば、イザベルが助けられる可能性に賭け、密入国を斡旋する組織に潜入に試みる。

 

マットのチームは命令を無視して、アレハンドロとイザベルを救出に向かう準備をしている。

 

ところが、アレハンドロとイサベルはガヨたちに素性がばれてしまい、捉えられる。

 

ミゲルは拘束されたアレハンドロの処刑をガヨから命じられて実行する。

 

アレハンドロはイザベルの目の前でミゲルに顔を撃たれてしまい、生死不明の状態となる。

 

ミゲルはアレハンドロ銃撃後、マットのチームがガヨのチームを皆殺しする危険を察知したかのように、走っている車から一人チームを離脱する。

 

その直後、ミゲルが察知した近未来のようにマットのチームがヘリコプターでガヨのチームを急襲・粛正。

 

マットはイザベルだけを助け出し、証人保護プログラムのサポートを受けさせるつもりでヘリコプターに乗せる。

 

一方のアレハンドロは、死の淵からよみがえる。

 

マット達が粛正したギャングたちから武器や車を奪って走り出す、生きながらえるために。

 

物語の舞台は1年後。身体中にタトゥーだらけとなって容姿が変貌したミゲルはフードコートで働いていた。

 

アレハンドロは、自分を撃った少年であるミゲルの目の前に現れ、「シカリオになりたいのか?」と問い、扉が閉められと共に物語の幕は閉じる。

 

(そう、ゴッドファーザーのエンディングのようにー。)

  

 (ゴッドファーザー(1972年)のエンディング)

 

映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】キャラクター紹介

Benicio Del Toro in Sicario: Day of the Soldado (2018)

アレハンドロ・ギリック


コロンビア人で元検事。

 

正体は復讐の鬼と化す暗殺者。

 

かつて、麻薬カルテルであるソノラ・カルテルにより、妻と子を殺されている。

 

マットと共に動いているが、国家の命により動くマットとは違って、アレハンドロを突き動かしている私怨のみ。

 

前作とは異なり、今回イザベルを娘と重ねる人情味が見られた。


キャスト:ベニチオ・デル・トロ

 

マット・グレイヴァー


旧知のアレハンドロと共に協力体制の元、メキシコ麻薬特別大作チームのリーダー。

 

超法規的行動をとれる権限をもつCIA特別捜査官。

 

キャスト:ジョシュ・ブローリン

  

Isabela Merced in Sicario: Day of the Soldado (2018)

イザベル・レイエス

 

今回、事情を良く知らされず、巻き込まれる立場の女性となる。

 

麻薬王カルロス・レイエスの末娘である16歳の少女。

 

アレハンドロの家族を殺した麻薬組織の長の娘で、今回の作戦のためにマットたちに拉致される。

 

キャスト:イザベラ・モナー

 

ジェームズ・ライリー

 

アメリカ国防長官。

キャスト:マシュー・モディーン(写真:中央)

  

シンシア・フォード

 

CIA副長官で、マットの上官。

 

キャスト:キャサリン・キーナー(写真:女性)

 

Jeffrey Donovan in Sicario: Day of the Soldado (2018)

ティーヴ・フォーシング

 

マットの同僚で、特殊任務を共にする。

アレハンドロ、マットと共に前作からの続投キャラクター。

 

今回は大幅に出演時間が多くなった。

 

キャスト:ジェフリー・ドノバン

 

ミゲル・エルナンデス 

 

ヘクターの誘いでカルテルの世界に足を踏み入れた14歳の少年。

 

キャスト:イライジャ・ロドリゲス(写真:右)

 

ヘクター

 

ガヨを慕っているミゲルの従兄弟。

 

キャスト:デビッド・カスタニーダ(写真:左)

 

ガヨ

 

マタモロス・カルテルの支配者。

 

キャスト:マヌエル・ガルシア=ルルフォ

 

映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】名場面ハイライト(評価・解説・考察)

ステファノ・ソッリマテイラー・シェリダン の最高傑作

前作は特殊構造を持つアート寄りの映画だったのに対し、今回は対照的。

 

ステファノ・ソッリマらしく、最初から最後まで正面衝突のパワーゲームによるバイオレンス描写。

 

現実に起こっている様を反映させた描写の数々は、想像以上だった。

 

続編の恩恵を最大限に発揮

前作をリスペクトしつつ、登場するキャラクターの素性が暴かれた世界で、繰り広げられることが可能となり、最初から最後まで全力投球による世界観。

 

若い2人のイニシエーションをからませた、キャラクターの成長に楽しみを見いだせる見事な創造性、脚本への力の入れようは大変素晴らしい。

 

正義と悪の境界線のぐらつきはもはや計測不可能

本作のテーマでもある、境界線の描き方は、ステファノ・ソッリマの持ち味を最大限発揮している。

 

特に、アレハンドロが手話で、口のきけない夫婦と子供について、話すシーンが印象的。

 

アレハンドロが良き父親だったことを思わせ、彼が抱える過去の痛みが垣間見えた。

 

暗殺者でありながら、任務の遂行と少女の命を天秤にかけ、人間としての良心を表現する、葛藤と決断は印象的だった。

 

一方、その場面と対比させながら、描かれるアメリカ政府からの一方的な作戦の中止と2人の粛正命令。

 

もっとも人間味がなく冷血なのは、あっさりと人を切り捨てる政府側である、そんなメッセージも込められているように感じた。

 

気になるサントラについてのあれこれ

本作の監督が、ドゥニ・ヴィルヌーブから、ステファノ・ソッリマへ、安堵と共に受け渡されたように。

 

スコア担当のヨハン・ヨハンソンが亡くなってしまい、ヒドゥル・グドナドッティルという、ヨハン・ヨハンソンの愛弟子へ継承されている。

 

これが前作を見事に、(いやむしろそれ以上かもしれない)、作品世界を体現し、より一層ダークに、ディープに研ぎすまされた音の表現を持たせている。

 

ヨハン・ヨハンソンへのリスペクトのたまもの。

 

そして最後に鳴り響くThe Beast

 

このシーンはついては、いつ・どこで・何度観ても、しびれるばかり。

  

このヨハンソン愛弟子、ヒドゥル・グドナドッティルの代表的なディスコグラフィー
 
必聴。
 
マグダラのマリア Mary Magdalene (2018) ※ヨハン・ヨハンソンと共作
チェルノブイリ Chernobyl (2019) ※テレビシリーズ
・ジョーカー Joker (2019)
 

3部作最終章完結編ではどうなる

未回収となっているピースがどのようにハマってくるのか。

 

最終的にどのように、ボーダーラインが引かれ、若い2人はどこまで成長し、レイエスカルテルとの決着により、シカリオの復讐の連鎖に終わりは訪れるのか。

 

地獄のスパイラル最前線への興味は、つきる事はない。

  

まとめ 

・映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】より楽しむための前作までのまとめ

・映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】作品概要

・映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】あらすじ・ネタバレ

・映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】キャラクター紹介

・映画【ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ】名場面ハイライト(評価・解説・考察)

 

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