映画好きならその輝かしいフィフモブラフィーを眺めるだけで、 大好物として白米をたいらげれるといった、絶対の信頼感を寄せているという人も多いはず。そして、寝食を忘れて没頭してしまうほど、監督作品を制覇したくなるタイプの作品を制作し続けている。必見作連発の映画作家として筆頭に挙がる両雄。なんとなく同じ匂いがするということで、今回はまとめて紹介したい【永久保存版】。
目次
- 【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】価値観の形成について
- 【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】ふたりの違いと共通点について
- 【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】デビュー作比較
- 【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】代表作紹介
- まとめ
【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】価値観の形成について
※画像の引用元:IMDb公式サイトより
アキ・カウリスマキ(写真:左)は、1957年(67歳)にオリマッティラで生まれたフィンランドの映画作家。
ジム・ジャームッシュ(写真:右)は、1953年(71歳)、オハイオ州カヤホガ・フォールズ生まれのアメリカの映画作家。
共に1980年代に監督デビューをしてから、現在まで現役を続けている、同世代のインディペンデントな映画作家である。
ジャームッシュの「ナイトオンプラネット」では、ヘルシンキが舞台となり、カウリマスキ作品常連のマッティ・ペロンパー、カリ・ヴァーナネン、サカリ・クオスマネンらが出演。
カウリマスキの「レニングラード・カウボーイ」では、ジャームッシュが出演している。
同時期に活躍したため、仲睦まじい交流もみられる。
なお、新作映画の「キノ・ライカ 小さな町の映画館」でも2人は共演している。
【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】ふたりの違いと共通点について
オフビート、ミニマル、そして独特のユーモアのセンス。
さらに、そのアティチュードにはパンクを感じものがあり、その象徴として、どちらの作品にもジョー・ストラマーが出演している。
逆に違いとしては、お国柄による空気感や雰囲気は作品へかなり作用する。
アメリカはどこかオシャレであり身近に感じるものの、フィンランドはどこか冷たく異国感を抱く哀愁が漂っているし、無常観を感じる。
なお、このことについては感覚的なものなので、生まれ育った環境や文化の違いで、人によるのかもしれないが。
【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】デビュー作比較
・罪と罰(1983年)
カウリスマキの監督デビュー作にして、原作はドストエフスキーによる名作「罪と罰」を扱い、ポテンシャルの高さを示した。
舞台をペテルブルグから現代のヘルシンキに移し映像化。
食肉解体工場で働く青年が、ある日仕事を終えた後、1人の男性を尾行し、突然射殺する。
警察の捜査線上にその名前が挙がるが、ゲームを楽しむかのように巧みに捜査をすりぬけ、刑事たちを翻弄する。
カウリマスキが敬愛するブレッソンの「ラルジャン」の影響が色濃く反映されている故に最高に素晴らしい。
カウリマスキの中で哲学的な作品の系譜として、のちの作品「 ラヴィ・ド・ボエーム」「白い花びら」へとつながっていくことになる原点。
・パーマネント・バケーション (1980年)
ジャームッシュの初監督作品から現在まで貫いているパンクスピリットがつまった原点。
かなり尖っていて荒削りでクール、大衆性に媚びないアンチドラマとしての日常を描く作風を確立している。
ニューヨークの街を彷徨っていく青春真っ只中の主人公、登場するアウトサイダーたち、ポエティックさ、ジョン・ルーリーの音楽などにジャームーシュ内面世界、日常感を切り取る感性が詰まっている。
また、「Up There in Orbit」が流れるダンスシーンが印象に残るエキセントリックさで脳裏に刻まれる。
「パーマネント・バケーション」は、直訳すると永遠の休暇という意味になる。
ラストの新たな旅立ちまで含め、ジャームッシュが主張する上昇志向を排した生き方はみていて大変清々しい。
それでは、次に年代別にそれぞれの監督作品について触れていきたい。
個人的なランキングは最後に紹介。
【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】代表作紹介
・カラマリ・ユニオン(1985年)
アキ・カウリマスキによるここではないどこかへを描いたパンクでクレイジーな作品。
理想郷を目指して街中をさまようシュールな展開。
15人の謎の男だらけが、全員フランクという同じ名前で登場する。
そして、カラマリ・ユニオンというイカ墨同名を結成し、アナーキーなロードムービーがはじまる。
この奇天烈さは、「レニングラード・カウボーイズ」エピソード0としての位置位置付けとなる。
・パラダイスの夕暮れ(1986年)
カウリスマキ監督の長編第3作にして、労働者3部作の1作目。
これをみれば、カウリスマキの世界にハマってしまうのがよくわかるはず。
それくらい面白い。 何というか、やり過ぎてはいないけど、センスがあって、ゆるくて心地いい、という最高によかったやつ。
カウリスマキ作品の常連、マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネン主演による、ちょっとひねった大人のラブストーリー。
セリフは極端に少なく、主演ふたりも感情を表に出さず無表情、無機質な雰囲気、淡々と描いているので、鑑賞時間も短い。
それでもなお、これだけのものが表現出来ていて、かなり残るものがある。
これはいいわーと鑑賞後に唸らされること必須。
・ハムレット・ゴーズ・ビジネス(1987年)
カウリマスキ初期作品なので、アキ・カウリマスキには珍しいヒッチコック的サスペンスに挑んだ姿勢がみられる。
シェイクスピアの戯曲「ハムレット」を題材に、一族のビジネスにまつわる、淡々としたオフビートだが、カウリマスキらしさが光るブラックユーモア満載。
・真夜中の虹(1988年)
カウリマスキによる労働者3部作の2作目。
前作同様、ブルーカラーの生活の厳しい社会的弱者にスポットを当てていて、ここではないどこかを目指す映画だが、ハードボイルドやノワール色が強くなっているといった特徴がある。
アウトサイダーの主人公が乗るキャデラックはカッコイイし、バイオレンスが直接ではないが用いられる。
そんな乾いた世界観を構築しているが、シリアスの中に潜むユーモアが大変にシュールでハマる。
これもまたよき映画だ。
・レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年)
カウリスマキ兄弟の作品に頻繁に現れるフィンランドの国民的バンド、レニングラード・カウボーイズを捉えた映画。
独特のリズムあるコミカルさが持ち味の映画で非常に面白い。
ロックバンドとして知ったので、元々こういう出立なのかと思っていたものの、そのルーツたるや、なんと当初は、民族音楽のバンドだったとは。
そして、本作で重要なのが狂言回しとなる、マッティ・ペロンパーが演じる強欲なマネージャー。
長く尖ったリーゼント&ブーツにサングラスというスタイルで知られる彼がロックンバンドへ変身し、アメリカ行きが決定する。
最果ての地ツンドラからアメリカを縦断するロードムービーは大変心地よく、ジム・ジャームッシュの匂いするし、カウリスマキによる「ブルース・ブラザーズ」とも捉えることができる。
・マッチ工場の少女(1990年)
カウリマスキによる労働者3部作の3作目。
本作を悲劇ととるか、喜劇ととるかは、人それぞれの解釈によるが、決めつけてはならないタイプの作品。
また、気分によっても、その受け取り方は変わってくるだろうし。
カウリマスキが試みたのはそんな高等技術のような気がする。
前2作までとは異なり、陰惨なイメージが強まり、徹底的に突き放した姿勢がみられる。 カティ・オウティネン演じる少女は、無垢な故に世界からみはなされてしまう。
鑑賞のタイミングとしては、この世はなんてクソッタレだ、と思ったときにみるといいかもしれない。染みる。
・コントラクト・キラー(1990年)
カウリスマキによるハードボイルド作品。
ロンドンの水道局で働くフランス人の主人公が、突然のリストラにより、自殺を図ろうとするが死にきれず、新聞広告で見た殺し屋に自身の殺害を依頼するという物語。
主演はあの名優ジャン=ピエール・レオ。ケネス・コリー(スター・ウォーズシリーズのファーマス・ピエット提督)が渋い役を演じる。そして、エルヴィスの写真を背景にセットしつつ、贅沢に盛り込んだジョー・ストラマーの演奏シーンは必見。
実は、ジム・ジャームッシュがカウリスマキに紹介したとのこと。
エンディングにもジョー・ストラマーの曲が流れる。 ズキューンと胸に響く愛すべき作品だ。
もし、死にたくなったら、鑑賞するといいかも。死ぬのがばからしくなる、元気をもらえる作品だ。
・ラヴィ・ド・ボエーム(1992年)
パリを舞台にした「ラヴィ・ド・ボエーム (=ボヘミアンの情景)」、 3人の芸術家のボヘミアン生活を描く、カウリスマキにピッタリの題材。
原作はアンリ・ミュルジェールの小説「ボヘミアン生活の情景」。
これまで作品内の人物造形として登場してきた、社会の周辺で生きるアウトサイダーたち。
貧乏ながら陽気で自由気ままな生活を送っている。
もうそこまで若くもない芸術家たちだが、生き生きとしていて、独自のユーモアを交えながら、幸せな時を過ごす。
古き良きフランス映画の情感を捉えた、ロマンとセンチメンタルに溢れる恋物語。
ベルリン映画祭国際映画批評家連盟賞。
カウリスマキが贈るレニングラード・カウボーイズのシリーズ第2弾。
鬼作に相応しい、前作と負けず劣らずトチ狂っている(ほめています!)笑。
レニングラード・カウボーイズは前作からの続きにより、メキシコで人気を得ているが、実はテキーラに依存して壊滅状態。
そこへ姿を消していたマネージャーが、生まれ変わってモーゼになったと言って復帰してきてから本作は本格的に始動する。
彼らの故郷ツンドラに帰ることになり、ヨーロッパ縦断の旅に出る。
前作が行く話で、こっちは帰る話になっており、行って帰ってくる対になっているストーリーなので、個人的にはセットでおもしろかったので、楽しくみることができた。
・愛しのタチアナ(1994年)
〜最初に一言〜
本作はカウリマスキ作品のベストであり、オールタイムベスト級の作品。
どれくらい好きかと言うと、ジャームッシュの「ダウン・バイ・ロー」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」レベル。
#最高オブ最高
カウリマスキ作品をみていると、どこか自分にも当てはまるな、という時が多々ある。
本作はその最たる例で、兎に角2人のキャラクターが非常にイイ。
スーツを着ている仕立て屋でコーヒー中毒&レザージャケットを身にまとう車の整備屋でアル中のコンビ。
対照的なようでいて、共にロック好き、車好きで、車内でもレコードをかけるほど。
そんな魅力ある2人が車に乗って旅するロードムービー。
途中女性を乗せて、ある目的地まで目指すという展開なのだが、相変わらずまぁむっつりとしていて、全然喋らない。
繰り返しみてしまう。60分の名画。
そして、偉大な名優マッティ・ペロンパーの遺作。
・浮き雲(1996年)
カウリスマキの転換点となる必見の名作、敗者3部作の1作目、全編よいが特にラストは圧巻。
出演者にはカウリスマキの常連組が揃う(マッティ・ペロンパーは写真にて特別出演涙)。
落ちていく、どこまでも。
悪いことが重なって起こるとそんな風に感じてしまう時もあるが、この映画をみればきっと力が湧いてくるはず。
それは夫婦関係も含め。
自分でどん底だと思っていても、あとから振り返ったら、大したことはないことが多い。
その時に気づけるかどうかというのは非常に重要で、さらにそういう時こそ、周囲のサポートが出来ればさらに素晴らしい。
欲はなく、決していからず、いつも静かに笑っている。そういう者に私はなりたい。
・トータル・バラライカ・ショー(1994年)
総勢167名が登場する圧巻のパフォーマンスを披露するライブドキュメンタリー。
ロックンあり、民族音楽あり、歴史的なジョイント・ライブを敢行。
レニングラード・カウボーイズが持つ高い演奏力、退役軍人たちの統率されたオーケストラによるコンサート、他にも民族衣装に身を包みダンスを披露するメンバーが登場するなど、楽しみに趣向を凝らしたステージ。
はじめは異様な組合せに戸惑う構成だが、みているうちにしっくりと馴染んでくるので、体感時間はあっという間。
・白い花びら(1999年)
フィンランドの作家ユハニ・アホが1911年に発表した小説「Juha」が原作。
カウリマスキのモノクロサイレントの異色作。
時間も70分程度なのでみやすい。音楽は流れる。
田舎からしたら、華やかに思える都会の未知の世界からの誘惑に翻弄され、大切なものを見失ってしまう。
自戒の念を込めたような、律することのメッセージ性を含んでいる。
古典の雰囲気を持つ作品として、カウリマスキとの相性はバッチリで、映画愛を感じる。
この路線でも制作を続けて欲しい。
・過去のない男(2002年)
カウリスマキによる敗者3部作の2作目。
常連俳優マッティ・ペロンパーが1995年に急遽したことにより、その特別な想いを重ねたような力作。
過去との決別・今を楽しむ・将来に目を向けていく、といった決意を作品に託したように感じられる。
常連ヒロインのカティ・オウティネンが添えられ、過去作品でマッティが演じたシーンからの引用が多数みられ、救世軍バンドのライブシーンにも胸が熱くなる。
フィンランド・ヘルシンキ、理不尽な暴力、記憶喪失、犬、ホームレス、不況、音楽など味わい深いモチーフが特徴的だ。
カウリマスキの中でも人気の高い作品。
カンヌ映画祭グランプリ、主演女優賞、パルムドック賞。
・街のあかり(2006年)
ハニートラップに気をつけろ!!! 本作をひとことで現すならそんな映画である。
「浮き雲」「過去のない男」続く、敗者3部作の3作目。
フィンランド・ヘルシンキの街の片隅で生きる孤独な男に仕掛けられた罠。
普段はショッピングセンターの警備員をしており、これといった趣味はなく、日々を淡々と過ごしている。
そのままみているとみすごしてしまいそうになるが、その象徴しているものに注目すると、カウリスマキ監督が描きたかったスケールの大きさを感じる。
・ル・アーヴルの靴みがき(2011年)
カウリスマキによる難民3部作の1作目は、やや作風が変わった印象を受ける。
フランスの港町の街並みだったり、色使いの鮮やかさだったり、難民問題などが要因にだと思われ、ファンタジーさを感じる。
しかしながら、靴みがきの老人と不法移民少年の交流、それっぽいバンド、愛犬など、カウリスマキらしさは健在だ。
はじめて移民問題という政治的なテーマを扱いつつも、古きよき時代を投影させたキャラクターによる、人情に厚い物語として描いている。
厳しいシュチュエーションでも、ユーモアを忘れることなく、そこからの脱却を図るといういつもプロットは残っていて、作風の変化と変わらないカウリスマキ監督がここにはある。
・希望のかなた(2017年)
「ル・アーヴルの靴みがき」に続く難民3部作の2作目。
ヘルシンキを舞台に、生き別れた妹を探す難民問題を扱った人間ドラマ。
カウリスマキ作品の中では毛色の違う社会派作品のため、ビターテイスト、シリアス路線になっており、かなり殺伐とした印象。
これまで社会の底辺に生きる労働者などの中にある良心などにスポットを当てた作品群が多かったものの、本作では内戦・戦争の影響による、ヨーロッパの不寛容・非寛容な社会への主張がみられる異色作。
ベルリン映画祭銀熊賞(監督賞)。
・枯れ葉 (2023年)
引退宣言から復活したカウリスマキ最新作。
労働者3部作に連なる4作目で、いつもながらフィンランド・ヘルシンキを舞台にしたラブストーリー。
相変わらずのカウリスマキの無機質な情景、寡黙なキャラクター、センスのある音楽の使い方、加えて映画愛に溢れた、淡々としつつも心に染みる、カウリスマキ作品をみている喜びに満ちた作品で評価も高い。
ウクライナ紛争のラジオニュース、カラオケシーン、映画館デート(かかっている映画やその後の感想は大爆笑を誘う、高等テクニック)、映画館の前のポスター、犬など散りばめられた断片ははどれもが不必要でいて実は重要なピース。
些細なことこそ日常において、否人生を彩る温かみのあるものだと改めて教えてくれる。
カンヌ映画祭審査員賞。
ジャームッシュのデビューからの3作品は3部作のように感じて、どれも好きだけれども、右肩上がりにあがりによくなっていく2作目。
ジャームッシュ作品の魅力である、構図の決め方、間の取り方、省略の美学など、どれも誇張がない何気さといった脱力感のバランスに長けた空気感が映画内にはいつでも漂っている。
そこに流れるスクリーミン・ジェイ・ホーキンスの「I Put a Spell on You」がとことん刺さる。
ニューヨーク→クリーブランド→フロリダを巡る、ジョン・ルーリー、エスター・バリント、リチャード・エドソンによる、男2人と女1人のロードムービー。
それなのに、単なる足し算になるのではなく、ジャームッシュらしさを提示した映画である。
小津へのリスペクトが垣間みられる。
・ダウン・バイ・ロー (1986年)
オールタイムベストの1本。
ジャームッシュが前2作での尖った試みが結実した傑作。
クールだけど不器用な2人は犬猿の仲、音楽ジョン・ルーリー、歌トム・ウェイツが兼ねている。
加えて陽気で順応性に満ち溢れたイタリア人ロベルト・ベニーニ、そしてニコレッタ・ブラスキ。
ロビー・ミューラーによるモノクロ撮影が、大胆な省略&余計な要素を削ぎ落としたミニマルさを際立たせる。
好きなシーンだらけ。
「ダウン・バイ・ロー」の意味はいわゆるマヴダチ。
これぞ親友映画の極みだ。
・ミステリー・トレイン (1989年)
大好きが詰まった作品。
エルヴィス・プレスリー&カール・パーキンスの街であるメンフィスの一夜を描く、ジャームッシュの3話オムニバス。
永瀬正敏、工藤夕貴、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス、ニコレッタ・ブラスキ、ジョー・ストラマー、スティーヴ・ブシェミらが出演。
音楽は、エルヴィスの「ブルー・ムーン」と「ミステリー・トレイン」が流れる上に、ロカビリー系の音楽やジョン・ルーリーまで使われている贅沢な仕様。
・ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年)
ジャームッシュゆかりの出演者たちが集まったオムニバス。
5つの都市で同時刻に走る個性豊かなタクシードライバーと乗客のやりとりを扱った人気作品。
オープニング
トム・ウェイツの「Back in the Good Old World 」が流れる。
ロサンゼルス
ウィノナ・ライダー&ジーナ・ローランズによる終始ミスマッチの妙。
ニューヨーク
おぼつかないやりとりがほっこりする、アーミン・ミューラー=スタール、ジャンカルロ・エスポジート&ロージー・ペレス。
パリ
イザック・ド・バンコレ&ベアトリス・ダルによる盲目の乗客と遠慮ないかけあい。
ローマ
酔っ払い客を乗せたマッティ・ペロンパーがフィンランド感溢れていてよい感じ。
・デッドマン (1995年)
面白いジャンル要素が全部入ってる。
アバンタイトル・オープニングが最高、Deadman変身後が最高、キャストが最高、音楽が最高。
画はジャームッシュによるモノクロ・ウェスタン。音楽はニール・ヤング全編即興演奏。
ジョニー・デップ演じるウィリアム・ブレイクが生から死へ転じたとき、彼をDeadmanへと仕立てる。
激ヤバ奇跡の豪華キャストが出演し、ジャームッシュ作品には欠かせなかったし、これからもだ。
・ウィリアム・ブレイク - ジョニー・デップ: 会計士
・ノーボディ - ゲイリー・ファーマー: ネイティブ・インディアン
・ジョン・スコフィールド - ジョン・ハート: 工場の支配人
・ジョン・ディッキンソン - ロバート・ミッチャム: 工場の社長
・チャーリー・ディッキンソン - ガブリエル・バーン
・女装のサリー - イギー・ポップ: 森の中の男
・ビッグ・ジョージ - ビリー・ボブ・ソーントン: 森の中の男
・ベンモント・テンチ - ジャレッド・ハリス: 森の中の男
・機関士 - クリスピン・グローヴァー
・イヤー・オブ・ザ・ホース (1997年)
ニール・ヤング&盟友クレイジー・ホースによる1996年のワールドツアーに同行したジャームッシュによるドキュメンタリー。
「デッドマン」でもニール・ヤングによる音楽だったが、ついに究極の競演が実現。
8ミリで撮影された荒い画面にライブ映像、過去の演奏シーン、インタビューや家族のコメントを織り交ぜ、30年間にも渡る軌跡を綴った旅路の記録として、ツアーを追体験する感動を与えてくれる。
・ゴースト・ドッグ(1999年)
「武士道とは死ぬこととみつけたり」という葉隠の引用からはじまる。
武士道に傾倒した黒人の殺し屋フォレスト・ウィテカーが主人公というジャームッシュの異色作。
連絡方法に伝書鳩を用いたり、日本刀を華麗に操ったり、独自の超アナログ哲学を持つゴースト・ドッグというキャラクターを構築。
これにヒップホップの轟音が鳴り響くといった意外な組み合わせだが、そのハズし方がそこそこハマる。
音楽RZA、撮影ロビー・ミューラーという本気仕様のスタッフを引き連れ、ジャームッシュのセンスが炸裂する。
・コーヒー&シガレッツ(2003年)
ジャームッシュにハマりまくった企画が実現、オシャレな会話が大集合、豪華キャスト大集結。
コーヒーの色香とタバコのスモークがモノクロームに映え、カフェインとニコチンを摂取する。
愛すべきオムニバス全11話の中でも、フェイバリットエピソードベスト3。
・メグ&ジッャクホワイト
これは一生エンドレスでみれられるわーぐらい好き。
・ブロークン・フラワーズ(2005年)
ビル・マーレイ、ジェフリー・ライト、シャロン・ストーン、クロエ・セヴィニー、ティルダ・スウィントンらが主演。
カンヌ映画祭審査員特別グランプリ受賞。
それにも関わらず、どうにもしっくりこないジャームッシュ作品。
・リミッツ・オブ・コントロール (2009年)
ジャームッシュのスペインロケによるロードムービー型殺し屋映画。
女性が裸にレインコートだけの姿なのに、それを目前にしても仕事中は手を出さないストイックさ、孤独な男というコードネーム、主役にイザック・ド・バンコレ。
古い映画が好きなシネフィルのティルダ・スウィントンがエモい。
他にもジャームッシュ組が集結、ビル・マーレイ、ジョン・ハート、工藤夕貴など。
音楽は日本のロックバンドとして初のコラボレーションを遂げたBORISがエッジな音を掻き鳴らす。
撮影は「花様年華」などのクリストファー・ドイルによる色鮮やかな映像世界が魅力的。
・オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ (2013年)
誰も素顔を知らない音の創作活動に没頭するカリスマ・アーティスト。
かたや本に埋もれ知識欲を満たし続ける浮世離れした絶世の美女。
O型RHマイナスが大好物な、互いに何世紀にも渡って愛し続ける夫婦に、トム・ヒドルストン&ティルダ・スウィントン。
ジャームッシュの映画印であるオフビート感覚で描く永遠の生命たちは超オシャレで超クール 。
映画内でホワイト・ヒルズが「アンダー・スキン・オア・バイ・ネイム」をプレイするセンス。
とにかく、この映画が持つテーマに似通った、画と音のアナログなカッコよさは筆舌に尽くしがたい。
・パターソン(2016年)
休日の朝はこの1本から始めたくなる、夏の終わりにピッタリなさわやかさを持つ。
誰がみても楽しめる万人向けの尖っていないジャームッシュ作品。
日常のオフビートと詩の融合で、主人公の生活同様ミニマルにみせるジャームッシュの集大成。
やっぱり、ジャームッシュ作品が似合い過ぎる永瀬正敏の登場シーンに涙した。
・ギミー・デンジャー (2016年)
それは監督デビュー作から顕著に表れているし、その姿勢はずっと変わらない。
そんなジャームッシュがイギー・ポップ&ザ・ストゥージズのドキュメンタリーを撮るという待望の企画。
そんな組み合せからしてワクワクするし、身震いを感じ、刺激的だ。
これは、イギーからの「ストゥージズの映画を撮ってほしい」とのオファーを受けて実現したもの。
1967年から74年にかけて活動し3枚のアルバムを残しバンドは自然消滅、パンクムーブメント以降、評価は高まりのちに伝説のバンドとして語られるようになる。
映画は、生々しく荒々しい等身大のイギー・ポップ&ザ・ストゥージズに対する、バンド愛とセンスが光る敬意に満ちた作品として、これからもインスピレーションを与え続ける。
・ デッド・ドント・ダイ(2019年)
鉄板のゾンビコメディ企画。
ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントン、クロエ・セヴィニー、スティーヴ・ブシェミ、トム・ウェイツ、セレーナ・ゴメス、ダニー・クローバー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、イギー・ポップら豪華な出演。
それにも関わらず、残念なジャームッシュ作品。
まとめ
【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】価値観の形成について
【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】ふたりの違いと共通点について
【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】デビュー作比較
【アキ・カウリスマキvsジム・ジャームッシュ】代表作紹介
極私的【アキ・カウリスマキ】ランキング
1.愛しのタチアナ
2.罪と罰
3.パラダイスの夕暮れ
4.浮き雲
5.コントラクト・キラー
6.ラヴィ・ド・ボエーム
7.白い花びら
8.枯葉
9.過去のない男
極私的【ジム・ジャームッシュ】ランキング
3.オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
5.コーヒー&シガレット
6.ナイト・オン・ザ・プラネット
7.ミステリー・トレイン
8.ギミー・デンジャー
9.デッドマン
10.リミッツ・オブ・コントロール
最新情報はFilmarks(フィルマークス)で更新中↓